2014 Fiscal Year Annual Research Report
社会学的リスク論による「リスクガバナンス」モデル構築のための学説史的・理論的研究
Project/Area Number |
24530596
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小松 丈晃 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (90302067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リスク / 無知 / ルーマン / リスクガバナンス / 機能分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、(1)9月に開催された科学社会学会年次大会(於:東京大学)において、セッション「ルーマンのリスク論再考」において「ルーマン『リスクの社会学』の基本的視角とその展開可能性」と題した報告を行い、その独特のリスク概念、機能分化論とリスク論の関わり、時間論を基礎にした立論の意味、等について述べ、討論者・参加者と討論した。この報告は、本研究課題の観点から見ると、近代の機能分化がリスク管理のさいにもたらす負の効果をも含めて、機能分化をリスク社会論の観点から問い直していくための手がかりを得るうえで重要である。また、(2)論文としては、本年4月に刊行された『社会学研究』第94号に「無知をめぐる争いと科学/政治」を投稿し掲載されたが、ここでは、東日本大震災以後の状況をP.Wehlingらにならって「無知をめぐる争い」として特徴づけた上で、本研究の中心的研究課題である「リスクガバナンス」あるいは科学と政治との関わりに関連して、社会学の学説史を振り返りつつ、昨今のその有り様を「不確実性吸収」という組織論に由来する概念を用いて考察した。さらに、(3)12月には、上記(1)の研究報告とも関連するが、U.ベックとともに、社会学的なリスク研究の大きな流れを形作った重要な研究の一つであるN.LuhmannのSoziologie des Risikos(『リスクの社会学』)を単独訳で新泉社より刊行した。本書は、90年代初頭(1991年)に書かれたものであるが、東日本大震災後のリスクと不確実性をめぐる社会学的な研究にとって重要な基礎的視角を提供しうるものである。
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Research Products
(3 results)