2012 Fiscal Year Research-status Report
健康・環境リスクをめぐる不安言説分析:その連鎖と強靭さに関する実証研究
Project/Area Number |
24530598
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
柄本 三代子 東京国際大学, 人間社会学部, 准教授 (90406364)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リスク / 身体 / 健康 / メディア / 環境 |
Research Abstract |
文献研究を中心に、今後行う調査の枠組みについて検討した。さらに予備調査として、不安をめぐる科学言説に対する態度および理解の様式を探るべく、原子力発電所の事故により福島県から避難している人びと、あるいは自ら「市民」と称して積極的に食の安全に関して活動を行っている人びと等の話を聞いたり、フィールドワークとして諸々の市民活動に参加した。 上述予備調査として行ったフィールドワークや資料収集の成果をふまえ、2012年11月3日に札幌学院大学で行われた日本社会学会において、「不確実な科学言説の読まれ方――健康/環境リスクと不安をめぐる語りと実践」というテーマで報告を行った。内容としては、健康/環境リスクをめぐる関心の高低は、先行研究で述べるところの「精神的余裕」「デジタルデバイド」「科学的リテラシーの有無」だけで説明されうるのか、という点について実証データをもとに批判的に検討した。 2013年1月にオランダのアムステルダム大学で開催されたInternational Sociological Assosiationが共催した'Amsterdam Risk Conference'に参加した。とくにRisk,Food and GMOs、Risk and the Media、Risk and Everyday Lifeといったセッションに参加し、有意義な議論を行いつつ今後に向けての情報交換を行った。これに関連して日本における食のリスクが海外へ向けてどのように報じられているのか、「Japan Times」で使用される言説について検討した。 日本固有の状況に対するリスク意識を、他の国におけるリスク意識と関連づけて考察することの意義は大きい。とくに「食」ということに関しては、国や地域ごとの社会・文化的差異が多様であり、そのような背景とともに考えることの重要性について再認識できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献研究を中心に進めてきた結果として、専門的知識を持たない一般の人びとに対する緻密なインタビュー調査について行うことが本研究において重要であり、そのためには、当初予定していた質問項目および調査方法そのものを再考する必要が出てきていることがわかった。つまり、調査対象者の属性や関心の範囲について質的調査によって綿密に探ることが本研究にとって重要であると同時に、あまたある「不安言説」について、どこまでを調査対象とするのかということをある程度あらかじめ限定することも必要である。しかしこのことは、当初想定していた範囲内での微調整であるから、「おおむね順調に進展している」とした。2013年度はさらに調査対象者の数を増やすと同時に、質的なヴァリエーションについてもさらに検討しつつ実施したい。 ここまで研究を進めてきて、まずは「連鎖と強靭さ」の現状を実証的に記述する必要があることが課題として明確となったことはひとつの達成点である。また、その背景にあるのは何かということを明らかにするためには、さらに理論的検証を行う必要があることもまた今後の課題として考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様、さらに先行研究を渉猟し、実証研究を行う上で不可欠である理論的背景および枠組みを固めていく作業を充実させていく予定である。また様々なメディアにあたり、資料を収集しつつ現状の把握に努める。 その一方で、2013年度はインタビューとフィールドワークを中心として実証データを集める点を重視して研究を進める。インタビューに関しては、とくに健康/環境リスクに関して関心の高い、いわゆる「市民」と自称する人びとに対して集中的に行う予定である。一方で、「市民」とは分断されている「無関心な人びと」のインタビューも試みたい。 また一方で、食をめぐっては生産者として健康/環境リスクに関わる人びとへのインタビューも計画に入れている。様々なステークホルダーが関わりつつ健康/環境リスクをめぐる言説空間が作られている現状を分析するため、多角的に実証研究を進める必要がある。 したがって今後の研究の推進方策としては、実証研究の具体的な対象と方法に幅を持たせつつ、データを説明するための理論的核についても検討する、ということになる。 また研究の途上であっても国内外を問わず積極的に成果を報告する機会を持ちたいとも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は以下である。 「物品費」のうち、研究備品として書籍代に1万円。消耗品費として機器備品費に4万円。 「旅費」のうち、国内旅費としてフィールドワークに20万円。海外旅費として国際学会への出席に25万円。 「謝金等」のうち、調査協力謝礼として30万円。 以上、総合計80万円を支出する予定である。
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Research Products
(2 results)