2013 Fiscal Year Research-status Report
移民流入と伝統的低位職の地位変更に関する考察:比較研究の視点から
Project/Area Number |
24530600
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
西村 祐子 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (80276451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 玲子 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30432884)
WHITE Bruce 同志社大学, 国際教育インスティチュート, 准教授 (00411059)
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Keywords | 皮革業 / ギルド / 低位職 / 移民 / 組織化 / ケアワーク / 介護保険 |
Research Abstract |
低位職従事者の社会的地位を上昇させるには同業従事者自身による組織化が行われ、国家と結びついた職域の専門化と社会的な認証システムの創設が重要である。同業組織が専門知識・技術の進化と共有を重視している場合、移民などの新規参入者であっても同業組織に参加が認められ、結果的に同業の社会的地位向上につながることが認められる。 日本の伝統的低位職とみなされる皮革業の場合職人組織の未発達が大きな要因となっている。徳川幕府下での内戦の消滅による皮革の需要の激減により権力に対する従属関係が強化された。大きな収益をあげる部門であったにもかかわらず、収益は権力側と商人らが掌握し、職人部門における専門技術は社会的にも職人ら自身においても認識されることがなかった。。 他方欧州の皮革部門の場合10世紀以降の職人による専門ギルド組織が定着し、組織自らが相互におこなう品質管理や長期の専門職訓練が実施された。収益の多くは職人集団のなかに還元され、技術への社会的評価は高かった。技術をもつ移民労働者は地縁的ギルド自体にとりこまれつつ皮革業種全体の社会的地位の向上に役立った。 現代の東アジアにおいて低位職とされる介護部門においては多くの労働が移民によって担われている。このため介護部門の社会的地位を上昇させるための国家的あるいは国際的な技術認証システムが必要とされているが、韓国や台湾における調査では介護系移民労働者は家事補助者と同等に見られ、専門職として認識されることがない。日本の場合、上記と異なるのは移民受け入れが始まる前に介護保険制度が導入されたことである。家庭内労働力と区別される公的介護システムが導入されることにより、移民労働者の一部がもつ高度な介護技術が日本国内の介護専門従事者と共有され介護セクターの技術を向上させることに役立った。 皮革部門における社会史的研究との比較考察が現在進められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文発表、学会発表が海外で定期的に行われている。 論文をもとにした出版の準備やシンポジウムの準備がされつつある。 前近代と現代をつなぐ統合的研究に発展しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.英語と日本語による出版。 2.低位職セクターにおける職業専門化と組織化、国際的な連携による地位向上についてのシンポジウムを組織する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張および国内シンポジウムの計画が一部次年度にもちこされた。 1. 国際学会での発表〔2回:アジア1回、)2.海外調査(イスラム圏2回、欧州1回、インド1回)3.国内シンポジウム1回
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