2013 Fiscal Year Research-status Report
社会階層と社会的ネットワークの地域比較についての平均構造モデルの適用
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24530603
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
菅野 剛 日本大学, 文理学部, 教授 (10332751)
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Keywords | 社会階層 / 社会的ネットワーク / 社会関係 / 社会調査 / 郵送調査 |
Research Abstract |
本研究では、学際的に関心が持たれている、格差と社会関係の関連について分析を進めている。本年は、東京都台東区において、社会階層と社会的ネットワークに関する郵送地域調査を実施した。対象者は、選挙人名簿を抽出台帳として、東京都台東区在住の25歳から64歳男女であり、1700名を等間隔抽出した。 暫定的な結果として有効回収数は502票、有効回収率は29.4%である。回収率は決して高くはないものの、対象者の方々のご助力もあり、社会階層や社会的ネットワークを尋ねる郵送調査としては特に低いということはなく、妥当な回収率といえる。データについてはほぼ入力を終えている。データ・クリーニングなどの作業を進めており、基礎集計作成などを行っている。 今後、過去に実施した他の地域調査データとの比較が出来るように、データを整えることにより、社会階層や社会的ネットワークについて、詳細な地域比較分析が実施出来るようになる。このように、社会的資源の不平等な配分状況を表す社会階層のあり方と、人々の日常的な生活の基礎をなす社会的ネットワークのあり方の間の関連について、どのような関係が見られるのか、実証的研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として、1年目の平成24年度に、資料収集、先行研究の確認、効率的なデータハンドリングの模索や、新しいデータ解析手法やプログラミングの修得に必要な準備、社会調査の実施の準備にあてている。そして、2年目の平成25年度に、地域調査を実施し、調査データを収集、データ作成を行った。 この間、社会学分野での計量的手法にとらわれることなく、他分野での様々なデータ解析法や、多様な種類のデータに触れて分析を試みることにつとめてきた。また、科学的研究においては、再現可能性が重要であるが、近年注目されている効率的な Reproducible research のため、Emacs org-mode、R、Sweave、LaTeX、R markdown、pandoc などの連携について模索を行った。 そして、東京都台東区において郵送地域調査を実施した。外部組織との諸々の連絡や予約、調査実施に関連する必要な全ての事務手続き、調査実施に必要な物品の購入手続き、作業過程の説明や手引き、各種資料の作成、効率的な作業分担やペース配分の設定など、全てのプロセスを一研究者が管理し、自身で担当するため、スケジュールが集中している際には厳しい状況となった。結果的には、研究計画の観点からはおおむね順調に進展しているといえるが、研究費の使用については昨今の事情もあり、今後十二分に注意しつつ、無理のないペースで研究計画を遂行していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに蓄積して来た研究を元に、郵送調査法による地域調査をさらに進めていく。これまでに、北海道札幌市北区(1994年)、大阪府吹田市(1999年)、東京都世田谷区(2005年)、群馬県桐生市(2007年)、東京都府中市(2008年)、東京都足立区(2009年)、東京都中央区(2010年)、東京都台東区(2013年)において、それぞれ計画標本数1500-1700程度の無作為抽出による郵送地域調査を実施し、調査データを蓄積して来た。 本来、大規模な複数の地域調査を一挙に実施できれば最も望ましい。しかし、莫大な調査費用の捻出、調査に動員できるリソースの制約、コーディングやデータ・クリーニングなど細かな配慮が求められる専門的作業の精度などを考えると、調査を外部委託することなく、一研究者が調査の全プロセスに携わって実施できる範囲としては、時期を少しずつずらしながらの調査実施は一つの方法であると言える。 今後は、まずこれらのデータをきちんと整備し、地域比較調査データの強みを生かす形でデータ分析を行っていく。また、長期的な視野に立って、これまでの調査地域と社会・経済・文化的に、対照的な特徴を有するような場所を選定して、さらに調査を進める。そして、本調査研究で収集しているデータだけに拘泥することなく、他の大規模調査な全国調査データやパネル調査データとの比較分析や得られる知見に目を配りながら、分析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度残額は10,346円である。社会調査作業のデータ入力、資料作成、補助作業などの作業に伴い、人件費が必要となったが、作業日程の調査や都合により、作業後半段階での、若干の調整金額が残ることとなった。 繰り越し予定として10,346円を想定しているが、研究計画の大きな流れと進展のあり方については基本的に順調であり、引き続き、データ入力、資料作成、補助作業を行うため、使用計画に大きな変更はない。
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