2013 Fiscal Year Research-status Report
現代社会における「生きづらさ」に関する芸術社会学研究
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24530607
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
藤澤 三佳 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (00259425)
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Keywords | 障害 / 精神科病院 / 芸術活動 / アウトサイダー・アート / 生きづらさ / 精神病患者 / ひきこもり / 摂食障害 |
Research Abstract |
国内の自殺者が増えるなか、「生きづらさ」という感情に焦点をあて、その原因の一因として考えられる、学校における「いじめ」や、家族内における「児童虐待」を体験した人の聞き取り調査及び、生きづらさを抱える人々が集うさまざまな場を調査し、そこにおける表現活動、作品分析をおこなった。いじめや家族内における児童虐待体験者が、摂食障害、強迫神経症等の症状等の症状を抱える状態から、自己表現と他者からの共感によって解放されていくプロセスに関して研究をおこなった。 また同様に、映像表現においても、自己を映像で撮るなかで問題から解放される「セルフ・ドキュメンタリー」という注目される表現方法に関して調査をおこない、虐待体験に苦しむ若者が自らを対象としたドキュメンタリー制作を通じて解放されていくいろいろなバリエーションを提示した。 その研究結果は、「生きづらさと、自己表現によるそこからの解放~アートや映像による~」として、日本社会学会(於:慶応義塾大学)における研究報告としておこなった。 また本研究は、社会学と心理学との学際的研究内容であるので、日本臨床心理学会における大連大学における国際学会における研究発表として「生きづらさの自己表現~精神病院内における絵画活動の実践と鑑賞者の共感性について~」と題しておこなった。 論文における上記研究結果としては、日本社会臨床学会における学会誌である『社会臨床雑誌』(第21巻、査読有)において、「生きづらさと自己表現~映像、写真、造形表現による~」として発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の達成度は、おおむね順調に進展している。 その理由として、本研究は、生きづらさを抱えた人々の虐待体験やさまざまな症状に関係するという意味でプライバシーに大きく関わり、臨床心理学のように臨床の場がない社会学的研究では調査協力者が得られにくい面があるが、調査主旨の説明と地道な働きかけによって、協力的な精神科病院やインフォーマントを探し出すことができたことがその最大の要因である。また、学会報告や論文報告にも調査対象者の了承を得ることができたことも研究目的の達成が順調に進展した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に記載したとおり、今後の研究の推進方策としては、以下の研究調査を中心におこなう。 まず、東京八王子の平川精神科病院、東京足立病院における外来デイケア参加者を対象に生活史と造形作品の調査をおこなう。自殺の問題としては、自殺未遂行為をおこなった人々に対して生活史聞き取り調査をおこない、どのようにそこからメンバーと共に描くことを通じて生きる意欲を取り戻していったかを中心に作品分析とともに研究調査をおこなう。 彼らの社会的自己はどのように変化していくのか、そして鑑賞者である他者が彼らの表現に関してどのように感じ、いかなる社会的変化がもたられるのかという点に関して、仙台市で開催される展覧会を中心に参与観察をおこなうなかで詳細に分析をし、彼らを支える人間的、社会的ネットワーク、鑑賞者に関しても調査をおこなう。 また、以上の研究成果の発表としては図書として、『生きづらさの自己表現~アートによってよみがえる「生」~』というタイトルで出版を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者藤澤三佳が体調を崩し、予定していた平川精神科病院外来デイケア聞き取り調査(9月分)のうちの一つを実施することができなかったため。 実施することができなかった東京八王子市の平川病院のデイケア参加患者の聞き取り調査の残りの1ケースの調査をおこなう。その他、東京足立病院等、仙台市における展覧会への調査をおこなうので、宿泊、旅費等を使用する計画である。 研究図書としては、社会学における臨床社会学関連図書の他に、学際的研究なので、国内外の芸術関連図書、精神分析関連図書、臨床美術関連図書、臨床心理学関連図書費、及び、作品分析における画像作成費等を使用する計画である。
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