2012 Fiscal Year Research-status Report
原子力開発地域における「脱・原発依存」の地域づくりに関する実証的研究
Project/Area Number |
24530612
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
大坪 正一 弘前大学, 教育学部, 教授 (80194215)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 原子力開発 |
Research Abstract |
平成24年度は、これまでの調査研究の整理と本研究の分析に必要となる基礎的な資料・文献の調査・収集を中心に行った。青森県における原子力開発政策の展開と反対運動の歴史的展開の資料を、「核燃サイクル施設建設問題青森県民情報センター」に蓄積されている資料を中心に整理してまとめる作業を行った。また、比較研究として、事故を起こした福島県での同様の歴史について資料を収集し、整理されつつある。 この間2009年、2011年に青森県で実施した地域代表者アンケート調査と同様のものを、原発事故後1年後の住民意識調査として、青森県、福島県で実施した。地元新聞社が発行する東奥日報社「東奥年鑑」、福島民報社「民報年鑑」記載の地域団体の代表者に対する郵送法での調査で、実際に事故を起こした地域との比較や、当地での住民運動の進展の違いによる住民意識を比較検討を行っている。「脱・原発依存」の地域づくりに対する意識の変化では、実際の被害を受けた地域とそうでない地域の差は大きく、青森県では「安全神話」が未だに通用している状況が証明された。さらには、原発再稼働や核燃サイクル政策堅持の要求も以前にも増して高いという状況が示されている。 2つの性格の違う運動団体の調査をアクション・リサーチとして実施している。福島事故を受けて、一気に国政を変革するために向かって運動を進めようとする考えや、この状況では数年で原発問題は決着がつくので、新エネルギーや環境問題を中心に運動を進めていこうとする考えなどが出てきている。地域に根ざした運動についての理解が深まっているという状況にないことが示されている。 また、下北半島の現地調査を専門家と学生と一緒に計画し、東通村や六ヶ所村の地域づくりに関して認識を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歴史的資料の収集、整理は、青森県分に関しては計画通りに進展している。福島県分に関しては、収集している段階で、整理までは至っていない。地域代表者アンケートに関しては、福島、青森分は実施できている。運動団体のアクション・リサーチでは、「核燃・だまっちゃおられん津軽の会」に関しては順調に資料収集と整理が行われたが、「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」は興味ある結果が導かれなかったので、調査を続けることは断念した。これに変わって、2012年7月に新たな全県組織として「なくそう原発・核燃、あおもりネットワーク」が結成され、中央の新しい運動に触発された新しい運動を展開しようとしているので、対象を変えて調査を始めることにした。新たな視点としての避難、防災問題に関しては地域づくりをめぐっては新しい視点を提供できる問題として位置づけることが可能となった。 自治体政策をめぐっての研究会参加や、全国規模の研究会に参加する予定であったが、達成は低い状況である。理由は、本年度になって公務多忙になり、研究会や学会の当日に出張調査ができなかったことによる。その代わり、弘前市内で、全国的研究集会を3つほど企画したので、ある程度の、同分野や異分野の研究者との研究交流は達成されたと考える。住民運動論の検討としては、従来の反対運動の理論に対しては、本研究の視点での理論は優位性を示していることはある程度の確信を持ったことが成果であった。しかし、新しい動きとして評判になっている、官邸前デモや、ツイッターやフェイスブックを使っての運動の組織化などについては、青森県の事例しかとらえることができず、全国を回っての調査や意見交換は予定よりも不十分であった。学習運動論についての検討は、11月の東北社会教育研究集会での議論を予定していたが、公務との関係で参加できなかった。そのため、この分野も、次年度以降に回される可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
1.実証的研究として、25年度は前年度の研究を引き継ぎ、やり残した調査、検討会などを実施し、26年度は研究成果の総括に向かう。1)資料収集を継続するとともに、25年度中には分析に着手する。2)事故を起こした福島県との比較で著しい違いが見いだせた場合は、福島県での補充調査を実施する。3)青森県内の原子力開発地域で、新たな動きが見いだされた場合は、当該自治体への補充調査を実施する。 2.理論的研究として、1)前年と同様の理論検討会に参加する。(開催地は未定のものもあるが、前年と同様の旅費が必要)2)調査データ分析を発表する場を青森県内で行い、住民運動の理論を検討する場を企画する。3)研究成果として「人間発達の地域づくり運動」と題する著作を刊行する準備を行う。4)これまでの研究成果を関連学会で発表するとともに、運動団体との検討のための交流を行う。5)研究成果報告書を執筆し印刷する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
やり残した課題として、24年度に十分できなかった中央で新たに起きている運動(官邸前デモなど、ツイッターやフェイスブックで集まる「素人の乱」的な運動)の調査、取材を強める必要があり、調査旅費の比重を高める必要がある。 また、地域代表者アンケート(福島・青森)の結果を受け、やり残した宮城県について25年度に実施する予定なので、約1000名分のアンケート郵送費・謝金を予定している。
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Research Products
(4 results)