2013 Fiscal Year Research-status Report
原子力開発地域における「脱・原発依存」の地域づくりに関する実証的研究
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24530612
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
大坪 正一 弘前大学, 教育学部, 教授 (80194215)
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Keywords | 原子力開発 / 地域づくり / 住民運動 |
Research Abstract |
平成25年度は、これまでの調査資料の整理と一部の分析、新たな資料の調査・収集を中心に行った。青森県における原子力開発政策の展開と反対運動の歴史的展開の資料を、「核燃・だまっちゃおられん津軽の会」に蓄積されている資料を中心に整理してまとめる作業を行った。また、比較研究として、毎週金曜日に全国各地で行われている「脱原発デモ」、特に首相官邸前抗議行動を定期的に調査し、資料を収集してきた。 平成24年12月から平成25年1月において行われた福島県と青森県の地域代表者アンケート調査の整理・分析を行った。比較分析でいえば、福島県の地域代表者における脱原発の意識は強固なものであるのに対し、青森県における代表者の意識は、「脱原発の方向は認めるとしても、新エネルギーが実現できるまでは再稼働やむなし」という意見や、「原発ゼロにされては地域がたち行かない」という意見が多数を占めている。時系列的に見ても、同様の調査を青森県で平成21年と平成23年に行ったが、「原発依存の地域づくり」の意識は減少しているとはいえ、再稼働を求める声が多数を占めていることが示された。 弘前大学で他の分野の研究者とともに、原子力問題の総合研究の成果を現したものとして『環境・地域・エネルギーと原子力開発』(弘前大学出版会)という著作を編者となって発行した。これまでの研究との相違は、様々な分野の研究者が原発の問題を地域づくりの問題としてとらえ、「青森県の将来を考える」ための研究として出版されたことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歴史的資料の収集、整理は青森県分に関しては計画通りに進展している。その他の東北地区に関しては整理までは至っていない。運動団体のアクション・リサーチに関しては、「核燃・だまっちゃおられん津軽の会」や「なくそう原発・核燃、青森ネットワーク」のほかに、昨年2月に結成された「「核燃・原発運動住民運動青森県連絡会議」についての調査は順調に続けられている。全国に新たに起きている運動として、官邸前デモや金曜日行動など「素人の乱」的運動を研究対象としてとらえてきたが、実態が多岐にわたっているので、整理するための分析方法はまだ明確なものを導き出せていない。 全国規模の研究会に参加する予定を立てていたが、達成は低い状況である。公務多忙によって、研究会や学会の当日に出張調査ができなかったことが多くあったことが原因である。その代わり、学会や研究会で多くの人々と検討を進めたり、研究成果のまとめを発表する場としての会合を、次年度は弘前市を中心に3回ほど開催することの準備活動は行えたので、次年度に繰り越して実行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.実証研究としては、前年度の研究を引き継ぎ、やり残した調査、検討会などを実施し、1年間でまとめまでこぎ着ける。特に、「素人の乱」という新しい住民運動に関しては、まだ資料不足が感じられるので、引き続き追求したい。平成27年に盛岡市で、全国の地域づくりと社会教育に関する研究集会が開催される予定で、筆者も役割を果たしているが、この研究集会を準備する中で、東北の地域づくり運動を洗い直す作業が行われる予定である。 2.理論的研究としては、「脱原発の地域づくり」が成功するための条件等を整理すること、そのための主体的条件としての住民運動のあり方を検討することである。組織的な運動と、「素人の乱」的運動の違いやそれぞれの意義などが検討の対象となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査旅費として、成果発表の研究集会打ち合わせ調査を秋田県横手市で行う予定であったが、市民マラソンとぶつかって宿泊が取れず参加を断念した。公務都合で参加できなかった東京での集会や、3月27日に設定された研究会の旅費が使用できなかったなどの理由である。 住民運動調査の回数を増やすようにすること、再来年に予定された盛岡での成果発表研究集会の準備実行委員会が今年度頻繁に開催されることになったので、そちらに当てたい。
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Research Products
(1 results)