2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530616
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
伊藤 智樹 富山大学, 人文学部, 准教授 (80312924)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | narrative |
Research Abstract |
平成24年度は、既に申請者の研究や問題関心を理解したうえでの調査研究依頼、もしくはそれに類する信頼関係が既に構築されている事例に関する調査研究を計画した。当初より、どの事例について良好な関係のもと調査を継続できるかには流動的な側面がある点に留意し、実際の調査の進展にあわせて、実質的な研究成果の発表およびその準備を進めること旨としていた。結果として、事例のうち、(1)ALS患者会(申請書における事例2)、および、(2)医療依存度の高い人でも暮らせる家として主に独居者向けの賃貸集合住宅を営む事業者(申請書における事例4)、というふたつの事例に関して主に進展があった。得られた研究成果としては、第一に、在宅療養を患者自身が病いを生きる者として成り立たせていく支えとしてのピア・サポートの重要性を具体的かつ論理的に指摘することができた。第二に、在宅療養のプロセスの上に、上記(2)を含めた基盤的な生活の「場」を位置づけ、その絶対的な量の不足と、少数例が存立する制度的基盤もしくは近年の制度変化について掘り下げた論究を行なった。結論的には、意欲的な少数事例が今後拡大していくことを予感させる材料もなくはないが、もともとそのような意欲的な少数事例が発生していくにあたって社会制度がそれらを後押ししたとはいえ<ない>部分があるため、事態は楽観できず、今後の注視を必要としていることがわかった。第三に、それらの制度的変化の必要性をたえず適切に主張するために、現行の環境下での、在宅療養を<生きる>存在としての患者がどの程度実現可能なのかを探求する必要性を再確認し、ピア(仲間)を含めて、専門職などさまざまな存在を物語を創るための他者としてとらえなおす視座を具体的な事例研究を通して整備していくべきであることを、学会発表等により知見として提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査の進展は当初の計画通りであり、部分的には成果報告も達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた平成24年度の知見、とりわけその第三点目を重視して進める。在宅療養のプロセスを物語形成としてとらえ直し、ピアや専門職等を、特徴をもった他者としてマッピングする。まずは、ピア・サポートを軸として、聞き手としてのピアを特徴づけるための手掛かりを探求したい。それと比較対照する形で、他の聞き手たちがもつ特徴を考察する足掛かりを得たい。そのためには、まず、申請者が扱う事例のみに限定されず、さまざまな病い・障害をもつ人によるピア・サポートを視野に収めながら研究を進める必要がある。したがって、そのようなさまざまなピア・サポートに対して調査を行なっている研究者と情報・知見の交換を行なうことを重視したい。また、申請者自身が扱う事例の拡大も検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラポールを形成できた当事者との関係を中心として、調査を継続し、データを蓄積する。事例の拡大を検討するためのものも含め、調査旅費およびインタヴューの文字起こし等データ整理のための使用が、主な使途のひとつとなる。また、異なった事例のピア・サポート、在宅療養や他の類似したテーマ(障害者の地域での自立的生活、等)を扱う研究者と研究打ち合せを行なうための旅費も使途となる。その他には、病いの語り研究やセルフヘルプ・グループ等に関する国内外の文献を収集するための使用が主なものとなる。
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Research Products
(2 results)