2013 Fiscal Year Research-status Report
国際移民の編入様式の相違と階層移動にかかわる比較社会学的研究
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24530619
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
竹ノ下 弘久 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (10402231)
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Keywords | 移民の統合 / 受け入れの文脈 / 職業的地位 / 失業 / 非正規雇用 / グローバル化 / 機会の不平等 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に実施した分析モデルの構築をもとに、計量データの分析を進めた。具体的には、静岡県庁が2009年度に、静岡県に在住する外国籍住民のうち、人口規模の大きなブラジル、ペルー、韓国・朝鮮、中国、フィリピン、インドネシア、ベトナムの国籍を有する人々を対象に行った質問し調査のデータを用いて、かれらの失業について分析を行った。分析結果の中間報告をオーストラリアのブリスベンで開催された、国際社会学会の社会階層部会、日本社会学会、韓国のソウルで開催されたアジア太平洋社会学会で報告した。あわせて本研究と大きく関連する社会階層と不平等についての単著の執筆を行った。そのうちの1章は、移民と社会階層をテーマに、制度編成と社会階層の視点を移民の階層と不平等にどのような形で応用可能であるのか、理論的な議論を行った。 計量分析によって、次のことが分かった。移民集団によって異なる編入様式と失業との関係については、法的滞在地位によって、失業の動向に大きな相違があることが分かった。研修・技能実習制度で就労する移住労働者は、制度が失業を許容しておらず、今回の調査では経済危機後も失業率は低いままで推移していた。また、日系人の失業動向について、ブラジル人とペルー人を比較したところ、類似の法的地位であっても、ブラジル人よりもペルー人のほうが、失業率が高いことが分かった。 このような計量分析の結果を解釈するために、いくつかの小規模なインタビュー調査を行った。たとえば、国際移民の置かれている状況を出身国の文脈から検討するため、ブラジルの日系人研究を牽引してきたサンパウロ人文科学研究所の理事が、来日された折に、彼女と東京にて意見交換を行い、情報を収集した。また、横浜市の外国人が多く集住する団地で活動するNPOの代表にもインタビューを行い、計量分析結果の解釈に必要な情報を集めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に行った先行研究の検討や分析枠組みの構築にもとづいて、さまざまな移民集団の編入様式と職業や従業上の地位についての分析を進めることができた。そして、これらの研究成果についての中間報告を国際学会で行い、国際的な水準での研究のチェックを受けることができた。統計分析の結果を補足し、解釈するために必要な小規模なインタビュー調査も実施することができた。本科研の研究課題と関連する論文を執筆し、刊行することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本科研の最終年度である。経済危機後の移民の就業動向や社会経済的状況について、統計分析をさらに進め、その成果を国際学会で報告する。さらに、研究を通じて得られた知見を英語で論文として執筆し、国際的な学術雑誌に投稿するなどして、研究成果を発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
差引額としておよそ1174円が生じているが、研究自体は、予定通り遂行することができている。わずかな残額が生じた理由は、出張の際に、安価な宿泊施設などを利用することで、経費の節約に努めた結果である。 1000円程度の残額については、次年度以降、文房具などの事務用品の購入などに充当する予定である。
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