2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530622
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉澤 弥生 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (20513162)
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Keywords | 芸術 / 労働 / 文化政策 / 社会運動 / アーツカウンシル |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代芸術の創造の現場を担う人々の労働状況を、主としてインタビュー調査によって明らかにするとともに、その結果を踏まえ現場に即した文化政策のあり方を提示することである。さらに、自己責任論で語られがちな日本の「芸術文化」活動従事者の置かれた厳しい環境を、社会運動や社会保障に関する議論と接続させていくことも視野に入れている。 今年度は大阪、沖縄、それに先立って前年度に東京で、芸術文化専門の準公共機関「アーツカウンシル」が設立され、国と地方自治体レベルで文化政策をめぐる状況が大きく変化した。こうした急激な制度変更に際して、まず、大阪の文化政策を事例とした3本の論考(いずれも依頼論文)を公表するとともに、現状と課題の周知のための講演も行なった。次に、こうした変化が現場労働者にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために、日本各地のアーティスト、キュレーター、プロジェクト・施設マネージャー計10名にインタビュー調査を実施し、前年度に実施したロンドンと日本各地での調査結果と合わせ、のべ22名に対するインタビューを収録した『続々・若い芸術家たちの労働』(A5全68ページ)を制作公表した。この冊子は500部を印刷し、全国の大学や美術館やアートスペース、アートNPOなどのさまざまな関係者に配布したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目に制作・公表したいと考えていたインタビュー集を、2年目となる今年度に発行することができた。聞き取り調査は予定どおり進行している。一方で学会発表などは次年度に見送っているが、全体的に研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる次年度は、まず関西社会学会(5月)の若手研究部会「文化と労働」で「若い芸術家たちの労働」と題した報告を行ない、2010年以降継続してきた主として公的文化事業の現場労働者へのインタビューをもとに、ここまでのデータと今後の議論の土台を提示する予定である。また随時、大学だけでなく美術館やオルタナティブスペースでの講演も行なっていく。並行して、文化政策学、労働社会学、社会運動に関する文献調査を進め、専門誌への投稿を目指すとともに、「芸術労働」という不可視化されたプロセスについての開かれた議論の場を作っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、計上していた設備備品費を使用しなかったため 次年度、備品を購入する
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