2012 Fiscal Year Research-status Report
若者の政治的無関心とシルバーポリティクスに関する社会学的研究
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24530630
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
高橋 征仁 山口大学, 人文学部, 教授 (60260676)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 政治的無関心 / 私生活主義 / 齢間分業 / モジュール性 / 加齢効果 |
Research Abstract |
平成24年度は、主として、先行研究の検討と社会調査データアーカイブを利用した2次分析を中心に研究を実施した。 まず理論的研究として、前期に私生活主義関連の文献(見田1979,田中1974など)を洗い直し、その問題点について検討を行った。その結果、①日本固有の現象という思い込み、②時代効果と発達効果の混同、③政治意識に関する構造主義的前提、④資本主義体制への問題帰属という短絡化等の問題点が浮き彫りになった。また後期には、日本の政治状況の特殊性を説明するために用いられてきた文化心理学関連の文献(Markus & Kitayama 1991, 浜口1982など)について検討し、トートロジーの回避という理論的課題を明確化した。 他方、国際社会調査データアーカイブを用いた2次分析としては、国際社会調査プログラム(政治モジュール)や世界価値観調査における30~50ヶ国の比較データを用いて、以下の3点について分析を行った。a政治的関心における加齢効果、b政治的関心における領域特異的・モジュール的特性、c社会的・文化的環境が、各モジュールの重要性や加齢効果に与える影響について分析を行った。 このような2次分析を通じて、政治的関心のモジュール性やそれぞれの加齢効果に関する知見が、国際的データアーカイブにおいて、かなりの程度経験的に妥当することを明らかにした。政治意識には明確に齢間分業がみられるのであり、社会の安定化によってその傾向は加速する。私生活主義の蔓延によって政治意識が衰退したというこれまでの理解は、ドメスティックな道徳主義の産物であったということができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ISSPなどの国際比較データの2次分析を通して、「若者の政治的無関心」が私生活主義の産物ではなく、社会の安定化に伴う齢間分業の一形態であることを明らかにした。また国際的にみても、高齢者の政治的関心の高さこそ、日本社会の特徴であることを明らかにした。これらの知見は、これまでの政治意識研究の枠踏みを刷新するものであり、大いに評価できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の前期は、討論民主主義deliberative democracy関連の文献(Bessette19 80, Elster1998)を検討し、その問題点を明らかにする。また、c社会的・文化的環境条件と年齢秩序の関連について分析結果を整理することで、α社会調査データアーカイブを用いた研究に一定の区切りをつける。そしてそれらの知見について、研究発表を行う。 他方、平成25年度の夏には、首都圏と山口市周辺の市町村議員各5名、学生各5名程度を対象にインフォーマント調査を開始する。これは、、平成26年度の前後期に行う本調査への準備でもある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(9 results)