2012 Fiscal Year Research-status Report
ステップファミリーにおける孫と祖父母の関係に関する実証的研究
Project/Area Number |
24530635
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nayoro City University |
Principal Investigator |
小野寺 理佳 名寄市立大学, 保健福祉学部, 教授 (80185660)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 家族 / 世代間関係 / ステップファミリー / 離婚・再婚 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ステップファミリーにおける世代間関係、具体的にはステップファミリーの形成に伴うステップ孫(血縁関係のない孫)とステップ祖父母(血縁関係のない祖父母)の関係の実態を明らかにし、ステップファミリー支援に関わる課題について検討することである。平成24年度は、ステップ孫とステップ祖父母を対象とする調査、中間世代(親)から見たステップ孫とステップ祖父母の関係に関する調査を実施する予定であったが、調査対象者としてステップファミリーを営む人々をダイレクトにとらえることは極めて難しいことが明らかとなった。そこで、調査対象者の条件を少し広げ、ステップファミリー当事者だけではなく、その「予備軍」である離婚経験者・離婚再婚経験者や、そうした経験者と親密あるいは血縁的・法的に近い人々等をも含めて調査協力者を募り、面接調査をおこなうこととした。この調査により、ステップファミリー形成の前段階としての離婚、離婚から再婚への状況をとらえながら、新しい家庭を築く決断がなされ(あるいは、なされない)プロセスや、既に子どもがいる状態での結婚における新しい関係性の形成のプロセスを丁寧に探ることとした。具体的には、ステップ孫であるか、あるいはステップ孫となる可能性のある孫世代(親の離婚、離婚・再婚を経験した若者)、ステップファミリーを形成しているか、あるいは形成する可能性のある親世代(離婚、離婚・再婚を経験した中年者)、そして、ステップ孫をもっているか、あるいはもつ可能性がある祖父母世代(自分の子どもが離婚、離婚・再婚をした中高年者)、という3つの世代を対象として調査協力を依頼した。その結果、離婚と再婚を経て、子どもをめぐる家族のネットワークが豊かに拡がり、血のつながりによらない新たな親密な世代間関係が営まれている例や、こうした新たな関係性がもたらす葛藤や悩み等が徐々に明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ステップファミリーを営む人々をとらえることは容易ではない。わが国の場合は欧米に比較するとその数も少なく、ステップファミリーという名称もあまり知られておらず、従って、ステップファミリーであるとの自覚も特に持たれていないケースが多いと思われる。また、そうした事実を公にしたくないと考える人々も少なからず存在すると考えられる。こうした事情を考慮して、平成24年度は、ステップファミリー当事者だけではなく、その「予備軍」である離婚経験者・離婚再婚経験者とその周辺の人々、すなわち、離婚経験者・離婚再婚経験者と親密あるいは血縁的・法的に近い人々等をも含めて調査協力者を募ることとし、調査対象者を広く求めるなかでステップファミリーへの接近を試みた。この調査方法は、ステップファミリーを取り巻く多様な立場にある人々にアプローチすることによって、ステップファミリー構築が選択される条件や契機、あるいは現時点ではそれが選択されない理由、ステップファミリーが築かれていくプロセス等を多様な角度からとらえることができる。ステップファミリーをめぐる多様な立場における多様な悩み・葛藤・ストレスを知ることによって、ステップファミリーの全体像をより深く理解することができたと考える。平成25年度は、24年度調査で得られたデータを踏まえて調査対象者の条件を絞り込み、ステップファミリーに焦点化した内容の調査を実施する予定であるが、平成24年度の調査によってその基盤がおおむね得られたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、調査については以下のように進める予定である。平成24年度において実施した調査においては、ステップファミリー当事者だけではなく、その「予備軍」である離婚経験者・離婚再婚経験者や、そうした経験者と親密あるいは血縁的・法的に近い人々等をも含めて調査協力者を募り、面接調査をおこなった。今後は、調査対象者の条件を絞り込み、ステップファミリーにおける世代間関係の実態と意識に迫りたいと考える。そのため、孫、親、祖父母という三つの世代に注目しながら、具体的には次の6つの条件に該当する人々を主な調査対象者とする予定である。①子どものある相手と結婚したひと②子連れで再婚したひと③娘、息子が子どものある人と結婚した親(祖父母)④娘、息子が子連れで再婚した親(祖父母)⑤子どものある人と再婚した親がいるひと(18歳以上)⑥自分を連れて再婚した親がいるひと(18歳以上)である。これらの面接調査によって、ステップファミリーにおける世代間関係の様相を明らかにしていきたいと考える。併せて、大学における学生への協力呼びかけ、シングルペアレントの団体や高齢者の集う講座等への協力依頼によって配布調査を実施し、年代、性別、生活条件、家庭環境等において多様な人々が、離婚や再婚、ステップファミリーやステップファミリーにおける世代間関係についてどのような考え方をもっているのかを探っていく。 次に、家族支援に関わる行政諸機関におけるヒアリングと資料収集を進める。ステップファミリーを営む人々を含む離婚・再婚者対象のセミナー、交流会等の取り組みについての情報を収集し、調査で得られたデータを考察する際に参照する。 最後に、これまでの調査やヒアリングで得られたデータや情報の整理と分析を進めていくなかで、アメリカ等諸外国における調査結果との比較をおこない、日本的特質の抽出に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品としては、資料・情報の収集や調査時に使用する小型のパソコンと、調査票の作成やデータの整理・分析に使用するパソコンを用意する予定である。旅費の主なものは調査旅費である。面接調査に関する旅費としては、調査に関する打ち合わせや会議のための旅費、面接調査実施の度に必要となる旅費がある。調査地を札幌市・札幌市近郊を含む北海道内としており、調査対象者が居住する地への訪問が必要となるためである。面接調査に際して大学院生などに協力を求める場合はその旅費も必要である。次に、配布調査に関する旅費としては、調査設営のための打ち合わせや会議のための旅費、配布調査実施のための旅費がある。この他、ヒアリング調査と資料収集をおこなうための旅費が必要である。また、本調査研究においては、当該テーマに詳しい研究者や専門家の助言を得ながら研究を進めていく予定であるため、そのための会議や打ち合わせへの参加旅費も計上した。謝金としては以下のものを予定している。調査の準備や遂行に伴う事務的作業(調査票印刷、発送、回収等)への謝金、回収票の整理・データ入力作業外注代である。消耗品としては、調査に必要なICレコーダ用電池、データ分析に必要な分析用ソフト(統計ソフト)の他、調査実施に伴う連絡業務や書類整理のためにの文具代が含まれる。その他として、調査に使用するスペースの賃貸料、調査票印刷費、報告書印刷費、各種書類の郵送費や郵送調査の場合の調査票郵送費、打ち合わせの際の会議費等を計上した。
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