2012 Fiscal Year Research-status Report
1950年代の雑誌における文化人による言説生産とその受容に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
24530642
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Miyazaki Municipal University |
Principal Investigator |
阪本 博志 宮崎公立大学, 人文学部, 准教授 (10438319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大宅壮一 / 猿取哲 / 占領期 / 1950年代 / メディア史 / ライフヒストリー / 『週刊朝日』 |
Research Abstract |
2012年6月に開かれた日本マス・コミュニケーション学会春季研究発表会において「占領期のメディアと文化人――大宅壮一の活動をめぐって――」と題したワークショップを、同学会メディア史研究部会において企画した。このなかで問題提起者として、表題のテーマの報告をおこなった。これは大宅壮一(1900‐1970)が「マスコミの帝王」と呼ばれる1955年以降の歴史的意義付けを踏まえその占領期の活動に考察を加えたものである。 このあと2012年9月に刊行された吉田則昭・岡田章子編『雑誌メディアの文化史――変貌する戦後パラダイム』(森話社)において、「1950年代『週刊朝日』と大宅壮一――連載「群像断裁」をめぐって」を発表した。これは1950年にジャーナリズムに本格的な復帰を遂げた大宅と1954年に百万部を突破する『週刊朝日』とのかかわりを明らかにし、そこにおける大宅の言説にあらたな角度から光を当てるとともに、当時の大宅を近現代メディア史に位置づけたものである。 この『週刊朝日』について、同年11月に開かれた日本社会学会大会において「1950年代『週刊朝日』の読者参加企画に関する社会学的考察」と題した発表をおこなった。さらに2013年3月には、『週刊朝日』『サンデー毎日』『平凡』という1950年代の百万部雑誌における雑誌と読者に関係について、“Readers’ Contributions to Million-selling Magazines in Japan in the 1950s”と題した発表を香港大学でおこなった。 大宅に関する先行研究も少なく、また百万部雑誌である1950年代『週刊朝日』を今日の時点から歴史社会学的にとらえた研究もとぼしいなかで、1950年代の百万部雑誌における大宅の言説生産の様相を明らかにするとともに、百万部雑誌と読者との関係性に光を当てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記入した研究計画はおおむね順調に進んでいるといえるが、それに加え平成24年度には、申請書作成時には面識を得ることを想定していなかった重要なインフォーマントと知り合い、インタビュー調査を遂行することができた。よって、当初の計画以上に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究成果さらには前年度までの研究成果を踏まえ、次の2方向からの研究を進める。それは第1に、1950年代の大宅の言説生産について引き続き検討するとともにこの時期をはさむ大宅のライフヒストリー全体も視野に入れて、戦前・戦中・1960年代との連続性/非連続性を検討することである。 第2に、拙著『『平凡』の時代――1950年代の大衆娯楽雑誌と若者たち』(昭和堂、2008年)をはじめこれまで研究をおこなってきた『平凡』や上記『週刊朝日』といった、1950年代の百万部雑誌について考察を続ける。この過程では同時代に影響力を誇った他の雑誌も視野に入れる。 この2つを踏まえ、1950年代の雑誌の世界といういわば「地」を(読者と雑誌との関係性も含めて)明らかにし、そこにおいて言説生産をおこなった大宅という「図」を位置づける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に調査研究を進めるなかで当初の年度計画の想定よりも多くのインフォーマントと面識を得たり、想定していなかったインフォーマントとも知り合うことができた。こうした事情からインタビュー調査の旅費等に当初の予定を上回る費用が必要となったため、20万円の前倒し請求をおこなった。このうち2392円が次年度使用額となっている。 次年度請求する研究費とあわせた使用計画は、次の3点である。第1に、文献調査・インタビュー調査を継続しておこなう。第2に、そこで得たデータに対し関連文献を用いて考察を加える。第3に、このようにして得た知見について口頭発表するとともに学術論文を執筆する。
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