2012 Fiscal Year Research-status Report
原発事故・避難に伴う地域社会の維持に関する社会学的研究―広野町と楢葉町を事例に
Project/Area Number |
24530647
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
石丸 純一 いわき明星大学, 人文学部, 教授 (20326789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 真弓 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (20307789)
大橋 保明 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30387667)
高木 竜輔 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (30512157)
柳澤 孝主 いわき明星大学, 人文学部, 教授 (60310223)
菅野 昌史 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (70379494)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 原発避難 / コミュニティ / 支援 |
Research Abstract |
平成24年度は(1)原発避難者に対する聞き取り調査(約30ケース)と(2)楢葉町で実施した質問紙調査の分析をおこなった。 聞き取り調査に関しては、(1-1)いわき市、川内村、広野町、楢葉町、富岡町、南相馬市の避難者へ、避難の現状と将来の意向を尋ねるとともに、地域コミュニティへの関わりを聞いた。そのなかでは、広域避難によって行政区や各種活動への関わりが今も失われてており、警戒区域に指定されていることで将来の地域コミュニティの絵を描けていない。かつ警戒区域に指定されていることが理由で帰還してまちづくりに関わりを持ちたいと思う人がいる反面、避難を余儀なくされたことで正統性を失い、まちづくりに関われなくなってしまった人がいること、などが明らかになった。また(1-2)地域コミュニティの基盤となる生活インフラならびに支援の状況(教育、福祉)について明らかにするために、いわき市や広野町、福島県相双保健事務所への聞き取りを実施した。そのなかでは、震災から2年になろうとしている段階においても、長期広域避難に対応する生活インフラの整備が整っていない現実が確認された。 (2)楢葉町で実施した質問紙調査の分析については、楢葉町が実施したアンケート調査(2011年8月)の再集計、そして科学研究費申請後の2012年1月に高校生調査を、2月に20歳以上の避難者への調査を実施した。平成24年度はその再分析をおこなった。そこでは、雇用の喪失ならびに世帯分離に関して複雑な様相を示していることが明らかになった。高校生の調査に関しては、震災前に通っていた高校によって影響の受け方が異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に関しては各地域にて多くの避難者から聞き取り調査を実施し、研究の目的である(1)住民―住民関係、(2)行政―住民関係、(3)行政―行政関係について多くの知見を得ることができた。また行政への聞き取り調査を通じて避難者のサポート体制について明らかにすることができた。 加えてすでにおこなわれた質問紙調査の再集計をおこない、避難者の生活実態に対する分析をおこなっている。 本研究の目的は、平成25年度に実施を予定している質問紙調査において「長期」「広域」避難状況における住民の生活実態ならびに帰町意識の解明にあり、そのために必要な知見を聞き取り調査ならびに既存調査データの再集計によって得ることができた。 以上のことから、全般的に当初の計画通り、「おおむね順調に進展している」と評価できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は避難区域の違いが地域コミュニティの維持にどのような影響を与えるのかを、広野町ならびに楢葉町を対象とした質問紙調査によって明らかにすることを予定している。 ただし、調査を実施している間にも区域再編がおこなわれたり、中間貯蔵施設の調査が始まるなど、申請時には予定していなかったことが生じている。加えて、各地では各機関によるさまざまな調査が実施されており、住民が「調査疲れ」を感じている。そのため、両地域において同じタイミングで調査が可能であるかについて予断を許さない状況にある。状況を判断しながら、的確なタイミングで調査をおこなうことを検討している。 質問紙調査と平行して、避難者への聞き取り調査を継続して実施する。本年度は特に、行政と住民との関係、行政と行政との関係に焦点を当てて聞き取り調査をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は主に、(1)質問紙調査の実査に関わる費用、(2)聞き取り調査をおこなうための旅費、(3)学会発表ならびに打ち合わせのための旅費、に使用する計画である。 (1)質問紙調査に関しては、当初の計画通り広野町ならびに楢葉町を対象とした調査を予定している。ただしこれについては、当該地域において国、県などの調査が多数おこなわれており、現在行政との調整を進めているところである。タイミングによっては調査をおこなっても回収率が悪くなり、加えて調査公害となる可能性もある。適切な判断のもと、場合によっては質問紙調査を最終年度に先送りせざるを得ない可能性もある。 (2)聞き取り調査に関しては、いわき市、広野町、楢葉町での調査が中心であるため、基本的にはそれほど経費は必要としないが、福島市や南相馬市などの遠方の福島県内地域、その他県外へと調査をおこなうことも予定している。 (3)学会発表に関しては、前年度の研究に基づく報告を地域社会学会、社会福祉学会、日本社会学会などでおこなうことを予定している。
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Research Products
(8 results)