2013 Fiscal Year Research-status Report
原発事故・避難に伴う地域社会の維持に関する社会学的研究―広野町と楢葉町を事例に
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24530647
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
石丸 純一 いわき明星大学, 人文学部, 教授 (20326789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 真弓 いわき明星大学, 人文学部, 教授 (20307789)
大橋 保明 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30387667)
高木 竜輔 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (30512157)
柳澤 孝主 いわき明星大学, 人文学部, 教授 (60310223)
菅野 昌史 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (70379494)
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Keywords | 原発避難 / 避難者受け入れ / いわき市 / 軋轢 |
Research Abstract |
平成25年度は(1)原発避難者に対する聞き取り(約10ケース)と(2)原発避難自治体の関係者への聞き取り(約10ケース)、(3)避難者受け入れに関連する機関への聞き取り(5ケース)、(4)いわき市民への質問紙調査を実施した。 原発避難者に対する聞き取り調査では、主として楢葉町と広野町の避難者への聞き取りを実施したが、震災から2年以上が経過するなかで、復興に向けた新たな動き(中間貯蔵施設の建設など)が帰還に向けた態度を変化させ、新たな分断を生み出していることが明らかとなった。 原発避難自治体の関係者への聞き取りでは、主として楢葉町役場の方にお伺いしたが、ここで明らかになったのは、自治体全域が避難対象となったことに対応するコミュニティの維持が構造的に不可能であった点が明らかになった。震災から約一年間は住民の移動が続き、そのなかで行政は住宅の確保で精一杯で、コミュニティの維持まで考慮する余裕がなかった。 避難者受け入れに関連する機関への聞き取りに関しては、いわき市民と避難者との軋轢が生じるなかで行政当局も危機感が生まれており、それに対応する施策が生まれていること、しかし国の指針が策定のなかでは自治体間連携を構築するのが困難であることなどが明らかとなった。 最後、いわき市民への質問紙調査は、いわき市民と避難者との軋轢が発生するなかで、いわき市民が避難者をどのように「見ている」のかを明らかにする目的で実施した。その結果、原発避難者の流入によって生活環境への不満が高まっているが、他方で避難者のおかれた立場について理解すべきという回答が多く、将来に関しても避難者の意見を尊重すべきであるとの回答が多数を占めた。ただし若年層における拝外主義的な動きが確認されており、これについては今後分析を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画書では本年度は楢葉町ならびに広野町の住民を対象とした生活状況調査を実施する予定であった。しかし両町とも国県、または町の方での調査を実施しているため、両自治体から調査を見合わせてもらいたいとの申し出があった。いわゆる「アンケート疲れ」であり、両町での質問紙調査を断念せざるを得なかった。そのため両町での質問紙調査は最終年度に実施することとした。 その代わり、研究をスタートさせた後の案件として、避難者といわき市民との軋轢の問題が生じたため、いわき市民を対象とした避難者受け入れに関する質問紙調査を実施した。 そのほか、いわき市内の関係機関への聞き取り調査ならびに避難者への調査は順調に進んでいる。原発避難をめぐる事態の変化にあわせて、聞き取り調査を継続的に実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は(1)住民帰還をめぐる住民意志ならびに行動が、地域コミュニティにどのような影響を与えるのか、(2)避難が長期化するなかで避難者と受け入れ住民との軋轢の現れ方とそれへの各種機関の対応の仕方を明らかにする。 (1)に関しては、主として広野町の住民を対象とした聞き取り調査ならびに質問紙調査によって解明していく。広野町は避難解除から二年半が経過するが、それでも元の町に戻れない住民が多数いる。他方で町が実施したアンケートでは6割の人が将来帰還すると考えており、いわき市と広野町との二重生活する人も多数いる。そのような二重生活がコミュニティ維持において重要な手がかりになると考えており、その点について調査を実施する。 それに対して楢葉町では現在も避難指示が出されており(長期避難)、加えて中間貯蔵施設の建設計画を巡る動きも生じていた。これらのことによってコミュニティの維持がどうなっているのかを、聞き取り調査ならびに質問紙調査によって明らかにする。ただし楢葉町に関しては多数の調査が実施されていることにより、調査ができない可能性もあるため、その場合には以前実施した質問紙調査の再分析を進めることで本研究の課題を解決していくことも検討している。 (2)に関しては、2014年1月に実施したいわき市民を対象とした質問紙調査について詳細な分析をおこなうこと、加えて関係機関へのさらなるヒアリングを実施することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請書では平成25年度に楢葉町ならびに広野町にで質問紙調査を実施する予定であり、そのための予算を計上していた。しかし両町とも国・県・自治体による調査が多数おこなわれており、避難住民への負担ならびに回収率を考慮して質問紙調査の実施を見合わせざるを得なかった。 平成25年度に実施できなかった質問紙調査に関しては平成26年度に実施すべく、現在両町と調整をしており、タイミングをみて質問紙調査を実施すべく計画している。
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