2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24530653
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
池田 理知子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50276440)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メディア / コミュニケーション / 資料館 / 語り部 |
Outline of Annual Research Achievements |
四日市の民間団体である四日市再生「公害市民塾」(市民塾)が行った連続10回土曜講座の参与観察を行い、その分析結果を日本コミュニケーション学会九州支部大会で発表した。公害が激しかったころを直接体験した世代に、それを知らない若い世代が聞くという形式で行われた講座を参与観察することで、次世代が語り継ぐうえで何が必要なのかが明らかになり、そのことが発表論文の主なテーマとなった。四日市における資料館開館を見据えたこの企画は、結果的に本という形で記録が残ることになり、その本の「まえがき」を研究代表者が書いたこと、また市民塾主催の出版記念集会で研究代表者が編集者との対話による講演を行ったことは、学術的成果のみならず、広く一般市民に今回の成果を知らせ、現在進行形の公害への関心を高め、ひいては次世代の語り手を生み出す可能性を高めるという社会的な貢献へとつながっている。 水俣病資料館の「語り部」の講話がどのような意味をもつのかという課題に対しては、引き続き研究を継続し、講話の場の多様性という新たな発見があった。それは、水俣病患者や家族がどういった被害を受けたのかを知るために講話を聞きに来たオーディエンスに対して、自らの加害体験を語る「語り部」の講話においてであった。しかもその「語り部」は潜在患者へ診察を促すメッセージもそこで発信しており、いわば支援者としての語りを実践していることになる。講話とは「語り部」の体験を聞くだけの場ではなく、能動的な働きかけを持つ場であることがそこでは示されている。この研究に関しては、日本コミュニケーション学会年次大会で発表し、投稿論文としてまとめ、ジャーナルに投稿した。 また、これまでの成果を踏まえて単著の執筆を夏以降は行っており、近いうちに出版される予定となっている。
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