2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530666
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
渡辺 雅子 明治学院大学, 社会学部, 教授 (50130852)
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Keywords | 日系新宗教 / 異文化布教 / 海外布教 / 文化変容 / 現地化 / 新宗教 / 立正佼成会 |
Research Abstract |
日本の新宗教の異文化布教にかかわる調査をハワイと韓国において実施した。立正佼成会に焦点をあてたが、ハワイにおいては、同じ地域において日本の複数の新宗教がどのような展開をみせているのかについて、英語が主要言語であり、非日系人が多くかかわる真如苑、創価学会、日系人および日本語主体の金光教、天照皇大神宮教についても調査研究を行った。 立正佼成会の調査では、オアフ島の教会道場での活動の参与観察のほか、教会長および主要信者からのインテンシブな聞き取り調査を行った。さらに、マウイ支部長およびコナ支部の主要信者からの聞き取りを実施した。道場では日本語グループ、英語グループにわかれ、法座を行っていた。日本語グループには戦後移住した一世が、英語グループにはハワイ生まれの日系人が参加し、言葉の問題と両者が担っている文化の違いが分断をうんでいる。また、教会長は日本からの派遣であるが、戦後移住者にはアメリカ軍人と国際結婚した人を多く含み、かつてはハワイ生まれの人々と彼らとの間に軋轢があった。日系人以外の布教についてはフィリピン系の信者がいるが、あまり布教がなされているとはいえない。また道場の場所がホノルル市内ではなく、パールシティという近郊都市であることは、アクセスに問題があり、道場当番やサンデーサービス等の参拝が主要な実践になっている。 韓国では、立正佼成会韓国教会の教会長ほか、支部長、主任、総務部長等幹部信者に対するインテンシブな聞き取り調査を実施した。韓国佼成会の場合、100%が現地韓国人であることに特徴がある。教会長家族は元在日韓国人で、日本語と韓国語に精通しており、その点で言葉の壁を超えている。韓国佼成会では、現地の文化を取り入れている側面と日本的な方式をそのまま踏襲している側面がある。韓国での日本宗教の布教は、日本の植民地支配に関連する反日感情とかかわる困難を抱えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、バングラデシュ、インド、及び台湾での現地調査を行い、現地の宗教事情を把握するとともに、仏教系新宗教である立正佼成会に焦点をあてた調査を実施した。イスラム教徒がマジョリティのバングラデシュにおいては、マイノリティである仏教徒に対しての布教が主体であるが、上座部仏教とは異なり、生活実践の宗教として佼成会の教えが受容されている。また、バングラデシュの場合は、日本に対する好印象も追い風になっている。インドではベンガル地方の仏教徒に対する布教のほか、カーストでは最下層に属するヒンドゥ教徒が差別のない仏教に改宗し、仏教の教えの具体的な理解を求めて佼成会に入会するなど、興味深い展開がみられる。台湾は日本に対する印象はよいが、戦前に日本語教育を受けた人々から、台湾語世代に移行しつつある現状で、現地に即した信仰のあり方が模索されている。 平成25年度には、ハワイと韓国で現地調査を行った。佼成会が中心だが、ハワイでは複数の教団調査を実施し、同一地域での日系新宗教の受容の諸相について考察を深めた。ハワイでは日系人は25%を占め、エスニック・マイノリティではないが、英語が主要言語ではなく、日本語と二重構造になっている宗教では、現地生まれと戦後移民とのあいだに文化的な齟齬が生じている。 韓国では、佼成会は現地信者が100%であるが、在日韓国人を資源として活用し、かつ現地での宗教要素をとりいれつつ、日本にルーツをもつ信仰を展開していく様相がみられる。韓国の場合、反日感情の問題が深くその底流にあり、布教を困難にしている点がある。 日本の新宗教の異文化布教について、日本の本部の関連部所からの聞き取り調査や資料収集とともに、日系新宗教がどのように現地の人々に受容されているのか、現地に即した展開の諸相や布教上の課題について、事例研究を積み重ねており、調査研究は着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
日系新宗教の異文化布教について、同一宗教が異なる国において、どのように展開しているのか、それを規定している要因についてインテンシブな現地調査によって、宗教集団とそれを担う個人の両側面から接近し、明らかにしようとしてきた。 これまでは特に立正佼成会という一つの教団に焦点をあててきたが、最終年度である今年度は、筆者が長年にわたって繰り返し日系新宗教の調査研究を行ってきたブラジルにおいて、佼成会のほか、金光教、霊友会、創価学会、世界救世教などの宗教の調査も行う。 ブラジルの国力は近年上昇し、経済的な側面でもプレゼンスを高めており、筆者がかつて調査を行った時点とは状況が異なっている。 異文化布教の課題を考えるにあたって、同一の宗教が、国や文化の違いによって異なる展開をもたらす要因に関する研究を縦軸とするならば、同じ国において、異なる日系新宗教の展開のあり方を規定する要因に対する考察はいわば横軸である。これまでの研究成果の蓄積のあるブラジルで、時代の変化も踏まえて調査を実施する。 なお、現地調査を主体とするが、日本の本部や関連部所での資料収集と聞き取り調査、異文化布教に関する文献や各国の宗教文化についての文献研究も並行して実施する。また、これまでの研究成果を論文化していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用自体はおわっていたが、事務での精算のタイミングがずれたため、発生した。これは次年度分で処理する。 日系新宗教の異文化布教に関する現地調査をブラジル等で実施する。現地調査に際しては、旅費・滞在費・現地交通費のほか、現地での通訳費などが必要である。 また、これまで行った調査結果の整理を行うための文具類や、テープ起こし等のアルバイト費用も必要である。関連文献の収集のための図書費やコピー代も必要となる。
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