2013 Fiscal Year Research-status Report
マイノリティ・弱者・移民の相互連関に関する理論的・実証的研究-国際比較を中心に
Project/Area Number |
24530668
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
岩間 暁子 立教大学, 社会学部, 教授 (30298088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
挽地 康彦 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (30460041)
劉 孝鐘 和光大学, 現代人間学部, 教授 (80230605)
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Keywords | マイノリティ / ナショナル・マイノリティ / 少数民族 / 移民 / ソルブ / デンマーク / スウェーデン / 社会学 |
Research Abstract |
「マイノリティ」や「移民」の社会経済的状況は国家による認知の有無、保護政策の有無や内容、受け入れ方針のありようによって大きく影響を受ける。「マイノリティ」と「移民」をめぐる状況や政策の国ごとの違いの背後には、国によって異なる「マイノリティ」観や「移民」観があると考えられる一方、「マイノリティ」や「移民」の階層的状況が人々や政府の「マイノリティ」や「移民」のイメージや観念を規定している面もあると考えられる。 このような問題意識から、2013年度前半には「マイノリティ」や「移民」の実態に関する国際比較データの収集・分析、EUにおける保護政策の方針などの検討をおこない、海外調査の対象地域やヒアリング先を選定した。 8月のヨーロッパ調査では、1.ドイツで「ナショナル・マイノリティ」として指定されているソルブ人の居住地域を訪問し、旧東ドイツ時代から現在までの時期を対象とし、「ナショナル・マイノリティ」としての権利の変遷や、政治的経済的社会的状況の変化などについてソルブ研究所や民族組織「ドモヴィナ」でのインタビュー調査、住民への聴き取り調査、現地調査を実施、2.福祉サービスの水準が高いという共通点をもつ一方、対照的な移民政策を掲げるデンマークとスウェーデンを取り上げ、各国の「ナショナル・マイノリティ」政策の概要や「ナショナル・マイノリティ」政策と「移民」政策の関連などを比較するため、政府機関などへのヒアリング調査を実施したほか、コペンハーゲン大学の研究者2名と意見交換をした。 また、ドイツ統一前後の「ナショナル・マイノリティ」の権利保護をめぐる議論などを検討するため、憲法学やソルブ研究の専門家を招いた研究会も11月に開催した。 3月には突出したエスニック・マジョリティが存在しないハワイの民族関係や不平等のありようについて、ハワイ大学の研究者2名にインタビュー調査などを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な目的は学際的・国際比較アプローチを用いて1.「マイノリティ」概念が民族を中心に構成されてきた背景とその意味を「弱者」概念との関連を視野に入れて明らかにすること、2.「マイノリティ」と「移民」を区別する論理や背景の解明、の二つである。 主に二つ目の目的に関わって、2013年度は3つの課題に取り組んだ。第一に、「マイノリティ」や「移民」の実態に関する国際比較データの収集・分析と同時に、EUや各国における「ナショナル・マイノリティ」や「移民」に関する政策についての検討をおこない、海外調査の対象地域やヒアリング先の選定をおこなった。 第二に、8月にはドイツ、デンマーク、スウェーデンなどで「ナショナル・マイノリティ」および「移民」をめぐる状況や政策などについて、政策を所管する機関などでのヒアリング調査やマイノリティ研究の研究者との意見交換などをおこなった。また、ドイツの「ナショナル・マイノリティ」政策についての成果をとりまとめるため、11月にはドイツ統一前後の「ナショナル・マイノリティ」の権利保護をめぐる議論などを検討するにあたり、憲法学やソルブ研究の専門家を招いた研究会も開催した。 第三に、3月には突出したエスニック・マジョリティが存在しないハワイにおける民族関係や不平等のありようについて、ハワイ大学の研究者2名にインタビュー調査などをおこなった。 このうち、第一課題と第二課題の成果を(1)ユ・ヒョヂョン/岩間暁子、2014、「小さな民族の広い世界-ドイツ東部のナショナル・マイノリティ「ソルブ人」を通して」『応用社会学研究』No.56:191-210頁、(2)岩間暁子/ユ・ヒョヂョン、2014、「デンマークとスウェーデンにおけるナショナル・マイノリティ政策の現状と概要」『応用社会学研究』No.56:241-253頁という二本の論文で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度の課題は、以下の3つである。 1.「マイノリティ」「弱者」「移民」の概念間の関連の整理と保護政策の類型化 2.「マイノリティ」「弱者」「移民」の社会的包摂に向けた政策の方向性の提示 3.成果の発表 1および2については同じ東アジアの国で近年、多文化社会の実現に向けて精力的な取り組みがなされている韓国でのヒアリング調査の実施および専門家との意見交換をおこない、その成果を組み込みつつ、検討を進める予定である。 3に関しては、7月に横浜で開催される世界社会学会議(XVIII World Congress of Sociology, International Sociological Association)で岩間・ユが"Comparative Analysis on Minority Concepts between Europe, the United States, and East Asia"という題目で報告する予定である。このほかには、「マイノリティ」や「移民」に関する研究をおこなっている韓国の研究者と一緒に、韓国で国際会議を開催する準備を進めており、そこでこれまでの成果を発表する予定である。このほかに、学会誌への投稿や報告書の刊行に向けても準備を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ハワイ大学でのインタビュー調査に必要な経費のうち、1名分については、他の研究費を利用できたために繰越金が生じた。このように、有効に研究資源を活用することに努めた結果として繰越金が生じた。 2013年度の繰越金と2014年度の研究費を合わせた使用計画のうち、韓国でのヒアリング調査および韓国で開催を企画中の「(仮)マイノリティと移民をめぐる日韓カンファレンス」で発表するための海外旅費が支出の大半を占めるが、成果をとりまとめるための印刷費や英語論文の執筆のための英文校正費用にも充てる予定である。
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