2014 Fiscal Year Research-status Report
人間環境系を対象とする環境社会学理論の再構成-科学社会学的視点による批判的検討
Project/Area Number |
24530675
|
Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
松村 正治 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 准教授 (90409813)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 環境社会学 / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の環境社会学を代表する理論的枠組みについて、「社会-環境の関係」「環境をめぐる社会関係」を軸に捉え直し、批判的に再検討をおこなうものである。3年目は、これまでも調査で訪れていた沖縄県西表島に加えて、自衛隊基地誘致をめぐる住民投票がおこなわれた与那国島にも現地調査に赴いた。また、カネミ油症被害者が集中して発生した長崎県五島列島も研究対象にして、被害構造論や受益圏-受苦圏論を参照に検討を加えた。 特に理論的な検討を加えたテーマは、現代環境問題の重要な生物多様性保全についてであった。社会的ジレンマ論と生活環境主義の議論をもとに社会学的な考察を深め、研究成果を、大沼あゆみ・栗山浩一編『生物多様性を保全する(シリーズ環境政策の新地平 4)』(2015年7月刊行予定、岩波書店)所収の「地域主体の生物多様性保全」としてまとめた。この論文では、公共社会学の議論を下敷きにして、研究者の立場性を自覚しながら研究者による批判を社会に問い返し、その問いから議論を豊かにし、社会を開いていくという環境社会学の方向性を示した。また、こうした考察を踏まえて、堀芳枝編『学生のためのピースノート2』(2015年、コモンズ)所収「里山の遺産を生かしたコミュニティの可能性―持続可能な地域づくりの観点から」も執筆した。 3年間の研究によって、社会学においては環境という規範性に、環境学においては社会学的な視角に、それぞれこだわることによって、環境社会学の理論的な特徴が浮き彫りになると考えられた。こうした特徴を明らかにすることは、環境経済学・政策学などの環境系社会科学や、保全生態学などの環境系自然科学との対話を促すだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」と自己評価したのは、諸般の事情により、研究者へのインタビューと研究会開催を実施できなかったからである。未消化の予算が生じ、研究期間をもう1年延長することになった。しかし、本研究の成果となる論文を、環境政策を問うシリーズ本に掲載できる運びとなったことは、環境社会学の理論を隣接諸科学に向けて開く良い機会になるだろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
修正した計画通り、研究者へのインタビューと研究会開催を実施する。3年目に、環境学における社会学的な視点の特徴を示す論考をまとめたので、最終の4年目では、社会学に環境という規範性を導入する意義をまとめる論考をまとめたい。
|
Causes of Carryover |
平成26年度中に研究会の開催と研究者インタビューを予定していたが、研究代表者が予期せぬ校務負担と体調不良のため関係者と都合が合わせられなくなり、未使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究会の開催と研究者インタビューを実施して、未使用額を使用することにする。
|