2013 Fiscal Year Research-status Report
定量的・定性的分析を併用した日本の国際結婚カップルをめぐる家族形成の包括的検討
Project/Area Number |
24530676
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
竹下 修子 愛知学院大学, 文学部, 教授 (60454360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 義孝 京都大学, 文学研究科, 教授 (30115787)
花岡 和聖 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (90454511)
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Keywords | 国際結婚 / 家族形成 / 移動パターン |
Research Abstract |
平成25年度は、定量的分析と定性的分析を並行して行った。定量的分析に関しては、総務省統計局から2010年国勢調査個票データの提供を受け、2005~2010年における外国人の目的地選択、および国際結婚カップルの家族形成に影響を与える移動パターンについて考察した。その結果、次の3点が明らかになった。 第一に、新規流入移動に関しては、労働市場関連要因が最大で、同一民族集住要因がこれに次ぎ、国際結婚機会要因は最少である。一方、国内移動に関しては、労働市場関連要因と同一民族集住要因の説明力がほぼ拮抗しており、国際結婚機会要因の貢献は無視しうるほどに小さい。第二に、新規流入移動と国内移動のいずれかについても、サービス業の吸引力が製造業よりも大きいことが明らかになった。わが国在住の外国人に関する既往研究では、特に日系ブラジル人と製造業雇用の結びつきが大きな注目を浴びてきたが、この知見はその見解の見直しを迫るものである。第三に、外国人の目的地選択が多様になり、分散が進んでいること、あるいは、大都市圏内における郊外化が進展していることを示唆する知見がいくつか得られた。ただし、目的地選択に際して、同一民族人口の集住が依然として大きな吸引力をもっている。 次に、定性的分析に関しては、国際結婚カップルの家族形成の大きな課題である子どもの教育問題に焦点を当て、外国人ムスリムと日本人女性の国際結婚家庭におけるイスラーム教育についての聞き取り調査を実施した。家庭・地域・学校といった空間軸と、子どもたちの過去・現在・未来といった時間軸、これら2つの概念を柱として、名古屋市のムスリム家族の教育の現状と課題を明らかにした。そして、その問題の打開策を模索する日本人の母親たちによる自助活動を取り上げ、父親と母親、双方の文化を継承できる環境づくりへの取り組みを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画は、定量的分析と定性的分析の2つの分析方法を柱として、日本に居住する国際結婚カップルを家族形成の視点から考察することである。 平成25年度は、計画通り、定量的分析として、総務省統計局から提供を受けた2010年国勢調査個票データを用いて、2005~2010年における外国人の目的地選択、および国際結婚カップルの家族形成に影響を与える移動パターンについて考察した。その結果については「2005~2010年における新規流入移動と国内移動からみた外国人の目的地選択」(京都大学文学部研究紀要、第53号、2014年)で公表した。 また、定性的分析も、予定通り、国際結婚カップルの家族形成において大きな課題である子どもの教育に焦点を当て、外国人ムスリムと日本人女性の国際結婚家族を対象にインタビュー調査を実施した。その結果を論文としてまとめ、英文雑誌に投稿した。現在、査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、引き続き定量的分析と定性的分析を併用して、国際結婚カップルの家族形成に関する研究を進める。定量的分析に関しては、総務省統計局から提供を受けた2010年国勢調査個票データの分析をさらに進展させ、新たな論文を完成させて、日本人口学会で発表することと、査読付英文雑誌に投稿することである。また、定性的分析に関しては、外国人ムスリムと日本人女性の国際結婚家族における子どもの教育に関して、国際学会で発表する予定である。 今後の研究の新たな課題は、国際結婚と日本人アイデンティティとの関係性についてのインタビュー調査を実施することである。国籍・血統・文化は日本人のアイデンティティの構成要素であるといわれているが、これら3要素が国際結婚の当事者やその子どものアイデンティティ形成とどのように関連するのか考察する。国際結婚による日本社会からの排除と包摂を軸として、さらにジェンダーという変数を加味しながら、日本人アイデンティティを再考する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
英文雑誌に投稿するための翻訳料が発生したため。 2014年4月30日現在、翻訳業者に依頼済みであり、翻訳中である。
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Research Products
(2 results)