2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530678
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹内 隆夫 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (40105747)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 稲作:東北タイ、インドネシア / 縫製業:タイ |
Research Abstract |
平成24年度は、8月と翌年3月の2回にわたって調査村における縫製業についての聞き取り調査を実施した。この村はこれまで行った2回の全村調査で、縫製関係に従事する人が多くいたことは判明していた。しかし、それまでの縫製業は第一世代(故人)が修業をして技術を習得し、次いでその親族関係者や個人的に縫製店で修業をした40歳代後半以上の年齢層(第二世代)とそれ以下の年齢層(第三世代)とに分けることができる。最近の調査で、村ではこの第三世代層が増加していることをつかんでいたので、その具体的な内容の把握に努めた。2回の調査で判明したことは、以下のとおりである。 1.第二世代層が、第三世代と仕事の内容では区別がつかなくなっている。前者と後者のもっとも大きな相違は、前者は一人ですべての縫製の工程をこなせることであり、注文に応じた内容の製品を作成することができることである。生地のカッティングができることは彼らの矜持である。しかし、いまは元請けからの注文に応じた縫製をするか、バンコクでの縫製の仕事に雇われている。既製服が主流となり、注文服の注文が減少したためである。 2.第三世代にも、階層差が生じている。5月にバンコクから戻って自宅で人を雇って村では規模の大きな縫製の仕事を始めたケースが2件出てきた。これらはバンコクで村出身の起業家の下請けをしていたのだが(3人はいとこ同士)、前年の洪水のために帰村した者である。スカートの縫製が中心で、それまであったズボンの縫製からこちらに移動した縫い子も多くいた。スカートの方が縫うのが簡単なためである。しかし、半年後には、多くが自宅での仕事に移っていた。 3.縫い子の技術は、多くが第二世代から村で習ってから、バンコクへ出ており、村内で技術を習得する機会が存在した。元請けから仕事を得て自営で縫製をしている者もいくつも見られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
村内で農外所得を得られる場の分析をすることにより、村での生活が持続可能になるという視点から最も盛んな縫製業に焦点をあてて聞き取りによる調査を行ったが、誰がどのような縫製の仕事を行っているのか、仕事の中身や収入の関係を聞き取りの中心にした。しかし、個人で仕事を行っているケースはまれで、ほとんどが村内でのネットワークを形成して仕事を行っている。その中心は親族関係と友人関係である。親族関係は、村内ではいまだに村内婚が若い世代でも多くみられ、複雑な親族網が形成されている。これらは系譜の詳しい聞き取りでできる限り把握してきたが、聞いていてどのような関係かが分からない場合もでてくる。その際はまず関係性の把握に努めるのでなんとか関係性をつかめるが、友人関係となると把握が困難である。しかし、村外で(特にバンコクで)の仕事については、親族以上に友人関係による紹介も機能しているようだ。 親族関係の結びつきが強いが、必ずしも兄弟姉妹が同じ仕事をしているともいえない。仕事の条件が良ければ、良い方に容易に移っていくし、姉は同じグループといっていても、妹は同じ仕事だが別々にやっているというなど、きょうだいでも結びつきは条件次第という比較的自由なグループ構成のようだ。これが親族以外の者だと、もっと容易に他の場所での仕事に移って行きやすい。しかし、都市の元請の存在なしに、村内での縫製の仕事はなりたたないので、そのネットワーク形成過程の把握も必要になる。これらは具体的な聞き取りの過程で判明したことである。
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Strategy for Future Research Activity |
村内での農外収入を確保するやり方として、縫製業に焦点を当てて調査をしたのだが、農村工業という視点からみれば、抜け落ちるものもある。それは、自動車の修理にかかわる家内での作業(規模を拡大して、道路沿いに店を出している例もある)の業態の調査や門扉を作成しているグループもあるので、村内での農外活動についてもっと詳しく把握する必要がある。したがって、次年度の初めの調査に、縫製業の聞き取り調査で抜けた部分の補充調査を行うのと並行して、これらの業態に従事する村人への聞き取り調査を行いたい。村内の小売店舗についても同様である。これらの農外活動の全体像がつかめれば、農業との兼ね合いの実態が把握できることになる。そのことにより、村での生活を農業面と農外面の双方からつかめるので(実態は第二種兼業化が進展している)、テーマに掲げた持続可能な成長の方向性がつかめてくる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度と同様に聞き取り調査を中心とした研究費の使用を予定している。とくに今年度は、いくつかの業態にわたって調査をするので、アシストをしてくれる人の雇用を含めて、全体計画を立てるつもりである。 また、初年度はインドネシアのバリ島の農村を視察して、農業活動(稲作)のタイとの相違の大きさを目の当たりにしたが、今年度もジャワ島の農村を視察して同様の観察を行いたいと計画している。
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