2012 Fiscal Year Research-status Report
原発事故が首都圏の母親の生活設計と子育てに及ぼす影響についての社会学的考察
Project/Area Number |
24530691
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuoka Women's Junior College |
Principal Investigator |
加藤 朋江 福岡女子短期大学, その他部局等, 准教授 (90296369)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 家族 / 子育て / 社会学 / 原発事故 / 首都圏 / 避難 / 放射性物質 / 母親 |
Research Abstract |
1 具体的内容は以下の3点において記述できる。 (1)実施した研究内容:首都圏在住の母親、および首都圏から福岡県内に移住した母親について聞き取り調査をおこなった。また、首都圏から福岡県内に移住した母親を支援するNPO主宰の集まりにおいて定期的に参与観察をおこなった。これと並行して、原発事故や東日本大震災に関連する書籍や論文・雑誌記事の蒐集につとめ、研究全体の理論的枠組みを構築することを目指した。 (2)明らかになったこと:原発事故を契機として、「原発事故後に首都圏で子育てをすることの安全性」および「食生活を中心とした子育て方針の変化の有無」についての判断において、首都圏の親が分断されていることが推察された。また、その中で最も危機感を感じている人びとが子どもを連れて首都圏や東北以外の地域に自主避難をしており、少数派であるとはいっても一定の数が確認されることがわかった。これらの人々は、それまでの血縁・地縁によるつながりとはまた違った新たなつながりをSNSなどを駆使して広げており、それがかれらの親密性の範囲を塗り替えていることが指摘できた。 (3)アウトプット:平成24年12月に西南学院大学の研究会において報告をおこなった。また論文を執筆し、これは庄司洋子編『シリーズ福祉社会学4 親密性の福祉社会学 ケアが織りなす関係』(2013年7月刊行予定)へ掲載される見通しである。 2 意義・重要性としては、管見のかぎり、原発事故を契機として首都圏の親たちの子育て方針や態度がどう変わったのかまとまった研究が皆無であること。また、原発事故から2年以内の時期において聞き取り調査がなされたことにある。首都圏の標準が全国の標準でありうる現代において、親たちの放射性物質への向き合い方を考察することは十分に意義のあることであるとが指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの理由としては、聞き取り調査において当初掲げていた目標人数を下回ったことが挙げられる。これは、当研究が研究代表者1名のみでおこなわれているために聞き取り調査に行くことに時間的な制約が生じたことに尽きる。同じ理由で、当初予定していた熊本地区の避難者についてはどなたともコンタクトを取ることができなかった。 ただ、首都圏から子どもを連れて福岡市へ避難した人びとからの情報収集については、数こそは限られていたものの、1ケースあたり2~3時間と長い時間をかけてじっくり話を聞くことができた。また聞き取りの後もメールやSNSを用いて追加の情報を提供していただくことができた。聞き取り調査以外でも自主避難者を支援するNPOとかかわりを持つことができ、そこで定期的に開催される避難者の集まりに幾度か参加することができた。その場において、自主避難者の層の厚みや多様性を実感するに至った。 だが、自主避難者については理解が深まったものの、圧倒的多数である避難していない首都圏在住者についてはほとんど聞き取りができていない。交付申請書には平成25年度の実施計画として質問紙調査とデータベースの構築を掲げているが、これにプラスして首都圏在住の母親たちへの聞き取り調査も今後並行して行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1 質問紙調査:昨年度において聞き取り調査や原発事故・放射性物質についての関連書籍で得た知見をもとに、子育て世帯に対して原発事故がかれらの子育て方針や生活設計をどう変えたのか・または変えなかったのかについて大量観察調査をおこなう。具体的には、公益財団法人・生協総合研究所の協力を得て、生協の会員に対するWEBを利用した調査を実施、その分析と公表につとめたい。 2 追加の聞き取り調査:質問紙調査における質問や選択肢の設計をより十分におこなうために、また分析する際の補助資料として首都圏で子育てをおこなっている世帯および九州への自主避難者への追加の聞き取り調査をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「物品費」:コンピュータ関連部品、および書籍代として。 「旅費」:研究会、学会、首都圏での聞き取り調査への旅費として。 「人件費・謝金」:WEB調査謝金、聞き取り調査のテキスト起こし費用等として。 「その他」:文房具代など。
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