2012 Fiscal Year Research-status Report
国境を越える人の移動に対応した社会保障の在り方に関する研究
Project/Area Number |
24530693
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松本 勝明 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (80272300)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 ドイツ / 社会保障 / 国境を越える人の移動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、国境を越える人の移動に対応した社会保障の在り方を検討するため、ドイツを対象として、国境を越えて移動する人々が直面する問題、それを解決するための制度等の分析・検討を行い、それを基に、日本において生じうる問題点を明らかにするとともに、その解決のための具体的な政策の選択肢を示すことにある。 このため、本年度は、まず、国境を越える人の移動に伴う問題と解決の方向性に関する理論的な検討整理を行った。また、国境を越える人の移動、就労の状況などを把握し、日本についての検討において論点となるべき事項を整理した。そのうえで、ドイツをはじめとするEU加盟国間で移動する人々の医療保障の調整、国境を越えた医療サービスの提供・利用並びに他国から受け入れる医療専門職の資格の相互承認に関する制度などについて、制度の現状、効果と問題点、改善方策を把握し、検討を行った。 この成果については、2012年10月に開催された社会政策学会第125回大会において、「国境を越える人の移動に対応した医療制度」と題する報告を行い、EU社会保障政策の専門家などとの討論を行った。さらに、これを踏まえて、「国境を越える人の移動に対応した医療制度―EUにおける取組みと日本への示唆―」と題する論文を発表した。 さらには、2004年にEUに新規加盟した旧東欧諸国からの労働者の移動に関してドイツ及びオーストリアで設けられていた経過的な制限措置が2011年に終了したことに対応して、これらの国々から大量に流入すると予想される労働者に対する社会保障の適切な適用を確保するための包括的な立法措置が講じられたオーストリアの状況についての調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、文献調査及び訪問調査を通じて、国境を越える人の移動に伴い生じうる問題と解決の方向性についての理論的な検討・整理、日本についての検討において論点となるべき事項の整理、並びにドイツをはじめとするEU加盟国間を移動する人々の社会保障の調整に関する制度及び他国から受け入れる医師、看護師等に係る資格の相互承認に関する制度の現状、効果と問題点の把握など、当初の研究実施計画で予定していた研究を順調に進めることができた。 特に医療制度に関しては、医療サービスの国境を越えた提供及び利用を促進するためのEUの政策を最新の取組みを含めて把握・分析し、これを基に、日本に対する重要な示唆を導き出すことができた。 このような平成24年度の調査研究を通じて、本研究の目的達成に向けて平成25年度以降の研究を進めるための重要な基盤となる成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、まず、平成24年度の調査によって得られた情報を論点に沿って整理・分析する。その結果に基づき、日本での具体的な政策の在り方を研究する上で追加的に必要な情報を洗い出す。不足している情報を補うために、ドイツでの訪問調査を実施し、研究者・専門家からのヒアリング調査、研究協力者との意見交換及び文献情報の収集を行うことにより、国境を越える人の移動に対応した社会保障についての検討をさらに深める。 併せて、ドイツとの調整の相手方である周辺国の状況についても、文献調査及び訪問調査を行うことにより、把握・検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、平成24年度に予定していたヒアリング・意見交換が、対象者側の都合により延期となったことから、そのために予定していた費用が未使用となったことなどによるものである。来年度には、このヒアリング・意見交換も実施する予定であるので、次年度使用額と合わせて、平成25年度以降に請求する研究費を使用して、平成25年度以降の研究を研究計画に沿って進めることとしている。
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