2013 Fiscal Year Research-status Report
先進国における「社会開発志向コミュニティワーク」モデルの模索:日米の事例研究
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24530701
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲葉 美由紀 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (40326476)
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Keywords | 貧困削減 / 国際福祉 / 社会開発 / 開発的ソーシャルワーク / コミュニティワーク / エンパワーメント / コレクティブアクション |
Research Abstract |
本研究では先進国における社会開発的ソーシャルワークのモデル構築の手かがりを閉めることを目的とする。 今年度(2年目)は、引き続き本課題に関して社会福祉、コミュニティワーク、ソーシャルビジネス(社会企業)、地域開発の領域において文献レビューおよび資料・情報収集を行った。日本における社会開発的なコミュニティワークの事例として、福岡県大牟田市の認知症ケアコミュニティ推進事業に関する資料収集および関係者への聞き取りから、高齢化が急速に進む大牟田市では地域を基盤とした認知症ケアについて多分野恊働・多職種恊働・官民恊働・多世代間連携の取り組みが行われていることが明らかになった。具体的には、1)認知症コーディネーター養成研修、2)物忘れ検診・予防教室、3)徘徊ネットワーク・徘徊もぎ訓練、4)小中学校絵本教室・認知症サポーターなどがあげられる。この取り組みに関しては、8月25日に開催されたJSPS-NRCT Seminar at Research Expo 2013 において事例研究として講演(JSPS招聘講演者)を行う機会を得た。 一方で社会的起業ワクワーク・イングリッシュの取り組みは、スカイプを通してフィリピン人教師が日本人に英会話学習を提供している事業である。貧困世帯の学生を対象にスキルアップ、就労、貧困脱却や将来への夢とチャンスを提供するとともに、日本で深刻化している不登校児や引きこもり、被災地の子ども達を対象にオンライン英会話を提供している点は大変ユニークである。ビジネス手法を用いて、貧困削減、教育、将来への投資、福祉問題を連携させながら、日本における社会問題にも取り組んでいる社会開発的(人的投資)なアプローチだといえる。セブ島で3月10日–15日までワクイングリシュ・セブの現地調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目には引き続き研究課題に関する情報収集および先行研究のレビューを進めるとともに、日本における事例研究を行うことを予定していた。大牟田市の事例を中心に調査を進めたが、この事例に関してさらに聞きとり調査などが必要だと考える。資料収集を行いながら他の国内事例検討候補事業を検討しているが、業務上の理由により関係者への聞き取りなどの現地調査の実施については見合わせた UNRISDとILO主催の”Potential and Limits of Social and Solidarity Economy" 国際会議に参加(ジュネーブ、5月3日-11日)、日本社会福祉学会九州部会発表(福岡県春日市クローバープラザ、6月30日)、日本社会福祉学会口頭発表(北星学園大学、9月21日)、明治学院大学国際シンポジウム「グローバル化のなかの福祉開発と社会的起業」(明治学院大学、3月21日)に参加した。特に、カリフォルニア大学バークレー校社会福祉大学院のDr. James Midgley教授の基調講演「グローバルな視座からみるソーシャルワークと社会開発」は研究課題に深く関わっており、教授と協議・意見交換できたことは本研究を進める上で大変有意義であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成26年度)は、研究目的および計画に沿って文献調査・研究を行うとともに、アメリカの事例研究に取りかかる予定である。現地調査は夏か来春を予定している。研究費の使用計画は、会議・打ち合わせの諸経費、事例研究に係る渡航費・滞在費、現地での交通費、協力者への謝金(知見の提供など)など事例研究に係る諸経費、翻訳費、研究事務補佐雇用、国内外会議での研究成果等に係る渡航費・参加費・滞在費、文献購入、複写費、事務用品購入などを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本国内の事例研究の対象事業・取り組みに関する文献調査を行ったが、業務上の都合により現地調査(関係者への聞き取り調査や現地訪問など)や資料収集が県内の一カ所に限られたため。 今年度の実地予定計画を見直し再調整を行うとともに、2年目の研究の遅れを取り戻すために一層努力する。
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Research Products
(4 results)