2012 Fiscal Year Research-status Report
子ども家庭福祉実践におけるリスクとレジリエンスの視座の指針と評価指標の作成
Project/Area Number |
24530707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山縣 文治 関西大学, 人間健康学部, 教授 (10159204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩間 伸之 大阪市立大学, 生活科学部, 教授 (00285298)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 子ども家庭福祉 / レジリエンス / ソーシャルワーク実践 / 子どもの能動的権利 |
Research Abstract |
本研究の目的は、リスクとレジリエンスの視座を子ども家庭福祉実践に適用するための指針および評価のための指標を作成することである。 研究初年度である平成24年度は、児童養護施設入所児(以下、「入所児」)のレジリエンスについて以下の2点を明らかにした。第1は、入所児の高校進学および現在の通学状況に着目し、レジリエントな状態にある入所児の特性を抽出した。研究の方法は、半構造化面接方式による高校1~2年次に在籍する入所児への聞き取り調査である。調査の内容は、生育歴、施設での生活、家族、友人、施設職員との対人関係等で、得られたデータを質的に分析した。その結果、レジリエントな状態にある入所児には5つの特性があることが明らかになった。5つの特性とは、(1)「心身の安全が確保されていること」、(2)「周囲の支えを認識していること」、(3)「家族の複雑性を整理できていること」、(4)「自分が今ここにいることを受け入れていること」、(5)「将来について前向きな見通しがあること」、である。なお、これら5つの特性は1~3つのサブカテゴリからなる。 第2は、上述の調査から得られた子どもの発言をもとに、入所児のリスク要因と防御推進要因を抽出し、生態学的マルチシステムの視座から分類した。その結果、「リスク要因も防御推進要因も、個人、家族、より広範な社会環境という複数のシステムに存在する」(Fraser et al. 2004=2009)という先行研究と一致した。 本年度の研究では、わが国の子ども家庭福祉領域では学術的に検討されてこなかった、入所児のレジリエンスにかかわる事象を、より具体的に示すことができたと考える。また、子どものレジリエンスには施設職員の直接・間接的なかかわりが深く関係することが示唆された。以上の研究実績は、社会的養護という特有の環境下において、子どものレジリエンスに貢献する援助の根拠となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の目的は、児童養護施設入所児のレジリエンスについて、レジリエントな状態にある入所児の事例の収集と分析を行うことに重点を置くことと、当該入所児を担当している(またはしていた)施設職員の当該入所児へのはたらきかけの内容についてヒアリング調査を実施することであった。 レジリエントな入所児の事例の収集と分析については、目的を達成することができた。施設職員のかかわりについては、事例の収集は順調に進展しているものの、分析については現在も継続中である。このことの主な理由は、収集したデータ量が多く、その逐語録化に当初想定していたよりも時間がかかっていることである。さらに、質的分析の性質上、調査結果の提示には、研究者間での入念な検討を要するが、議論を十分に深められていないため、本年度の研究実績として提示することは差し控えた。以上のことから、本年度の自己点検による評価は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、レジリエントな状態にある入所児への施設職員のはたらきかけについて明らかにする。 これまでの研究によって、入所児がレジリエントな状態に至るプロセスは非直線的であり、いわゆる「浮き沈み」を繰り返しながら、徐々に良好な適応状態に至ることが明らかになっている。入所児および施設職員への聞き取り調査から、施設職員の入所児へのはたらきかけは、入所児の良好な適応状態が「沈み込むこと」を留める役割と、「浮き上がる」ことへの方向づけをする役割があることが示唆されている。今後は、「沈み」と「浮き」での2つの局面での施設職員のはたらきかけを、実証的かつ具体的な援助内容として提示していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)