2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災における遠隔地からのボランティアの費用と便益に関する研究
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24530723
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
渡辺 裕子 駿河台大学, 経済経営学部, 教授 (10182958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南林 さえ子 駿河台大学, 経済経営学部, 教授 (80189224)
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Keywords | 東日本大震災 / 災害ボランティア / 被災地の遠隔地 / 活動支援金 / 費用 / 便益 / 防災意識 / クロスロード |
Research Abstract |
1.研究の目的:東日本大震災後の復興支援については、被災地と被災地外では関心の度合いに差が生じている。そこで、遠隔地の人々が被災者支援として取った行動を明らかにし、遠隔地からの支援のあり方を検討することを目的とした。 2.研究の方法:2013年度は3つのアプローチで研究に取り組んだ。①2012年度に実施した防災訓練参加者調査の詳細な分析である。②中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」の受給団体の分析である。同会のホームページに掲載された団体リスト、及び、活動報告書を用いて、データベースを作成した。今年度は2011年5月~2012年12月の受給団体について、所在地による活動状況の違いなどを明らかにした。③昨年度の防災訓練参加者調査から派生した研究課題であるが、しばしば防災訓練に取り入れられているゲーム「クロスロード」を実施し、回答を収集した。 3.研究の成果:①防災訓練への評価と防災意識に関する論文、及び、震災時に想定される避難所運営に対する意識に関する論文を作成した。防災意識については、基本的に年齢差が大きかった。一方、避難所運営に対する意識は日常的に地域活動にどのように関わっているかの影響が大きかった。②ボラサポ募金受給団体件数は、被災地から遠隔地であればあるほど、少なくなっていた。また遠隔地の団体では、とくに短期的活動において移動コストが相対的に大きいことが示唆された。これに対して被災地の団体では助成額に比して、実活動日数や参加延べ人数が多かった。したがって、被災地の団体への助成のほうが効率的といえるが、今後は遠隔地を助成することによる被災地への関心の増大や寄付行動などへの効果も検討することが必要である。③大学での講義や演習の履修者を対象に、災害ボランティアのジレンマ状況で取るべき選択肢を討論させ、学生の属性による判断の違いを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.防災訓練参加者調査の分析:東日本大震災における募金行動については未分析であるが、調査票の質問項目の4分の3程度までを、今年度の2本の論文において分析することができた。 2.中央共同募金会の活動支援金受給団体の分析:計画当初は今年度に予定していた「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」の受給団体のデータ入力を、昨年度の1月から前倒しで開始した。その結果、公開済みの活動報告書の情報について、9月頃までにデータベースを作成することができ、順調に作業が進行していたと評価できる。しかしその後、中央共同募金会にボラサポ募金の活動状況分析を日本NPO学会に委託するという動きが生じた。その分析の結果は、2014年3月に学会大会において一部公表されている。委託をした分析データにはホームページへの非公開情報も含まれており、情報量が多い。本データベースは劣勢に置かれることになり、そのため極めて残念であるが、2013年10月以降のデータ入力を見合わせている。今後は更新を行わず、2014年度は第1~9回助成分のデータベースにもとづく分析を行う予定である。とはいえ、震災後1年6ヶ月頃までの活動の状況について、①正式団体名称,②団体所在市区町村,③活動概要,④活動地域,⑤助成金額,⑥団体代表者名,⑦活動名,⑧活動開始日と終了日,⑨実活動日数,⑩参加延べ人数,⑪活動した場所や拠点,⑫活動の対象者,⑬協力・連携した団体や機関,⑭活動した内容,が入力されており、様々な分析の可能性がある。 3.防災ゲーム「クロスロード」の実施と分析:今年度は「クロスロード」に関する情報収集や文献の整理を行った。また、「クロスロード」を学内の学生を対象に実施した。本研究課題とはやや異なる方向での展開であるが、新たな研究課題につなげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.中央協同募金会の活動支援金受給団体の分析:今年度は「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」の受給件数や助成額、活動日数、活動参加人数などを、団体の所在地を11のブロック・都府県に分けて、比較・分析した。しかし、活動の内容に関しては未分析である。阪神・淡路大震災が発生した1995年は、これまでボランティア経験がまったくない多数の学生が被災地で活動したことなどから、「ボランティア元年」といわれた。しかしながら、東日本大震災では学生の動きは鈍く、それには遠隔地からの活動への費用負担の問題があったものと思われる。そこで2014年度は学生団体や学校法人を抽出し、学生の活動の内容を明らかにする。それを通して、学生による災害ボランティアの課題を明らかにし、支援方策を検討する。 2.遠隔地からのボランティアの費用・便益に関する分析:中央共同募金会のホームページに掲載される活動報告書だけでは、本研究の最終的目標である「費用・便益の分析」を行うためには情報が十分でない。これまでに収集した情報とは異なるデータを追加した上で、分析を行う必要がある。そこで、分析対象がNPO法人格を持つ団体に限られるが、内閣府ホームページにおける「NPO法人ポータルサイト」の事業報告書を活用した分析を行う。同サイトには収支報告書と活動人員が掲載されている事例もあり、費用と便益の対応関係を知る手がかりとなる。また、実証分析に先立って、理論枠組みや方法論の検討を行う。 3.防災ゲーム「クロスロード」の実施と分析:「クロスロード」には正解はなく、震災とどのように関わってきたかの立場により、ジレンマ状況での見解に相違が生じる。今年度は一般の学生を対象に「クロスロード」を実施したが、本学のボランティア活動支援室とも連携し、ボランティア経験のある学生を対象としたデータを収集することで、学生の属性による差をさらに明らかにする。
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Research Products
(2 results)