2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530739
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
中野 敏子 明治学院大学, 社会学部, 教授 (20198162)
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Keywords | ソーシャルワーク / 社会福祉援助技術 / 障害者福祉 / 相談支援 / 知的障害者 |
Research Abstract |
1.措置制度から利用契約制度への移行期に、知的障害児者への相談経験のあるソーシャルワーカー11人へのインタビュー調査のうち、7人の質的分析結果から、①相談員としての背景(職歴、相談員としての自己研鑽、相談の視点・スタンス)、②障害相談の特徴、③制度環境の変化と課題の認識(行政組織の変化とサービス変化、制度課題への挑戦)、④行政の位置・役割、⑤時代的背景、の要素を導き出した。これらは、「相談」実践の「継承と転換」を捉えるにあたっての分析の枠組みを構築する要素として重要であり、また、障害者福祉制度の展開の中で、「相談」がどのように形成されたかを構造的に捉える手がかりとなる点から意義がある。成果の一部は日本社会福祉学会第61回秋大会で報告した。 2.「相談」実践を多面的に捉える意味から、「相談」の利用者のインタビュー調査(親2人、当事者自身2人)を実施。制度・サービスに連動する「相談」という特徴を捉える意義を確認できた。 3.知的障害分野の「相談機能」の形成過程の把握、とくに「相談における特徴」を捉えるために、先行研究文献・資料をもとに、児童福祉法の成立による知的障害児への「相談」の形成過程に焦点をあて分析・考察した。児童福祉法の成立期に「相談」実践を定着させることをねらいとして発行された事例集の分析をもとに、今日もなお「相談」業務の柱としてある児童相談所、児童福祉司、福祉事務所と知的障害児相談の原点を捉えた。インタビュー調査による「相談」実践の要素分析を深めるにあたって、重要な背景の資源情報となる。成果は、「戦後障害者福祉における『相談支援』形成過程の研究―児童福祉法成立と知的障害児の『相談』に関する一考察―」(明治学院大学社会学・社会福祉学研究、第142号、2014年3月)としてまとめ、報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定した研究計画をおおむね実施できている。 ①引き続き、先行文献・資料収集と分析を通して、知的障害分野における「相談機能」の変化を児童福祉法制度下の「相談機能」との関連で把握することができ、その後の「相談」の形成過程に影響を与える制度として福祉事務所、更生相談所および、地域療育等支援事業の展開とのあり方を追う意義を見出すことができた。 ②追加として相談支援経験者へのインタビュー調査(大阪)を実施した。インタビューの質的分析は、これまで実施した11名の分析を終了する予定であったが7名に留まっている。また、考察を深める意味で、全体的に導き出された要素の再検討の作業が残されている。 ③相談支援経験者インタビュー分析を補強する意味で「相談」の利用者である親(2人)及び当事者自身(2人)のインタビューを実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、本研究の目的である「戦後障害者福祉における『相談支援』形成過程の特徴をまとめ、とくに、知的障害分野における実践の「継承と転換」について一つの結果を導き出したい。そのために、これまでの研究成果をもとに、以下の研究内容を加え、包括的に分析・考察を進めていく。 ①障害者福祉制度の変化とそれに連動する「相談支援」実践の把握の背景として、これまで明らかにした点を踏まえて、福祉事務所、更生相談所、地域療育等支援事業との関連の先行研究・資料の分析と考察を深める。 ②相談支援経験者全員(11人)のインタビュー調査分析から得られた基盤となる要素について、質的分析ソフト(MAXQDA11)を活用し、①の成果を踏まえて再検討する。 ③「相談」の利用者(親、当事者自身)のインタビュー調査の分析から、「相談利用者の視点から捉える相談支援者の「相談機能」の特徴を炙り出すことを試みる。 ④研究協力者との研究会の開催回数を増やすとともに、これまでの研究協力者以外の協力を得て意見交換を進め、分析・考察の精緻性を上げていく。また、研究成果報告書の執筆に取り掛かる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月分のアルバイト勤務者用として予算化していた分が勤務者の都合で業務遂行とならなかったため、その分を親のインタビュー調査対象を増やし実施した。年度末であり、有効に活用するために差額が出た分は次年度に繰り越すこととした。 ①相談支援経験者インタビュー調査分析を立体的に行うために、補足調査として親及び当事者自身へのインタビュー調査の追加に伴う謝金とインタビュー調査のリライト費用 ②調査結果の分析・考察の精緻を上げるための質的分析ソフトの購入、研究協力者への謝金と関連資料のコピー費用 ③研究資料の管理・整理および研究会に関する事務処理担当アルバイト費用
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Research Products
(2 results)