2013 Fiscal Year Research-status Report
大大阪期の企業家による社会事業への貢献に学ぶ企業の社会的責任の研究
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24530753
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
小笠原 慶彰 京都光華女子大学, キャリア形成学部, 教授 (00204058)
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Keywords | フィランソロフィー / 四恩報答会 / 浄土宗 |
Research Abstract |
四恩報答会は大正初年の大阪で浄土宗の僧侶を中心にして創設された仏教慈善事業団体であった。しかしその背景には在阪の新興企業家による支援があった。それは現代的表現をすれば、企業家のフィランソロピーであったともいえる。 明治期以降の大阪における企業フィランソロピストとしては、本山彦一や弘世助太郎、中山太一、鳥井信冶郎、早川徳次、中山悦治、久保田権四郎、新田長次郎等は、良く知られた存在である。しかし彼らに限らず大阪で社会事業家を支援した在阪の実業家や企業家は、数多くいたのである。 一方、当時の浄土宗は、渡邊海旭に代表される「社会派」と称される一群の宗侶が宗教大学(大正大学)で仏教の新しいあり方を模索していた。そこで学んだ青年僧侶は、それを実践しようとしていた。そのような時期に宗教大学で学び、帰阪した寺院子弟が、仏教の新しいあり方を実践するために、貧困問題の解決に立ち上がったのである。 在阪の新興企業家たちも、ある程度の成功を収めた後、自分たちの事業の意味や社会的使命を模索していた。そして前記僧侶たちの活動に賛意を示し、彼らと協働で社会事業の推進に努めることになったといえよう。この後このような事例は多く見られるようになるが、その先鞭を付けた事業として四恩報答会創設初期の実態を探ることには意義がある。 25年度は、こうした四恩報答会の活動について、日本仏教社会福祉学会の年次大会で発表するとともに『浄土教報』等の浄土宗関係資料を中心とした未発掘資料を探索することに心がけ、26年度内の論文執筆に向けて準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度は、日本仏教社会福祉学会の年次大会における口頭発表をもとに、原著論文を執筆し、学会誌に投稿する予定であった。しかし、資料収集が遅れ、投稿までに至らなかった。 26年度は、25年度中の遅れを取り戻すべく鋭意努力し、すでに26年2月から4月にかけて新たに収集した資料の分析を開始している。 また26年度はこれとは別に新たな論文を1本執筆する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間第3年度には、特に四恩報答会の資料、特に浄土宗関係資料をさらに収集するとともに、企業家が関与した大正期の夜学に関連する資料その他の史資料を入手する。これらについては、企業論・企業史および日本近・現代史の専門的視点から研究協力者の示唆を得つつ、研究代表者(小笠原)が社史の入手を中心とした資料収集を実施する。 これらの資料をもとに研究代表者および研究協力者により、可能な限り対面的な意見交換を実施して、多様な視点から分析を行う。 以上のように図書や史資料の入手に伴って、研究代表者、連携研究者による意見交換を電子メール等によって行う。しかし、対面的な意見交換も不可欠であるので、研究代表者が研究協力者の勤務校等に出張(神戸→首都圏)する。 さらに国立公文書館、国会図書館等に所蔵されている資料、特にマイクロフィルム資料は、現物を閲覧しながら内容を確認する必要があるので、研究代表者が出張(神戸→東京)してその任に当たる。また、特に大大阪期における在阪企業の状況について詳しく知るために、企業史の専門家に研究協力者として専門的知識の提供を受ける。 第3年度は、本課題の最終年度であるので、成果をまとめ、研究代表者(小笠原)が学術雑誌で公表する。第2年度に公表予定の論文が未発表であるので、第3年度には都合2本の論文を公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第2年度に執筆し投稿予定であった論文が未完成だった。そのため資料収集の費用が若干未消化であったことと、論文投稿のための費用等が発生せず残高が生じた。 第3年度においては、すで年度当初から未収集の資料を鋭意収集するとともに学術誌に1本の論文は確実に投稿予定であるため、その費用として充当する。またさらにもう1本の論文を執筆予定であるため、その資料収集や投稿費用として使用する計画である。
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