2014 Fiscal Year Annual Research Report
大大阪期の企業家による社会事業への貢献に学ぶ企業の社会的責任の研究
Project/Area Number |
24530753
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
小笠原 慶彰 神戸女子大学, 健康福祉学部, 教授 (00204058)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会事業 / 企業家 / 社会貢献 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度である26年度は、大正期大阪における貧民学校であった徳風学校と有隣学校を中心に不就学学齢児の就学問題を支援した企業家について研究に取り組んだ。 1911年に大阪で私立の夜間学校として創設された徳風学校および有隣学校は、貧民学校であった。1900年の第3次小学校令では、貧困による就学猶予・免除を認めていたが、この両学校は義務教育から排除された貧困な学齢児の受け皿であった。また同年に制定された工場法は、学齢就労児童の義務教育就学を法的にクリアーできる環境(公立尋常小学夜間等)を整備しただけで、児童労働を無くそうとしなかった。さらにこの時点で私立小学校は、就学猶予・免除となっている学齢児だけが入学できた。両学校は私立学校だったので、公立尋常小学夜間と貧民学校を区別し、通学区域を考慮せず受け入れるのに好都合であった。またこの両学校は、警察官や実業家の「善意」に支援された感化救済事業としての学校であった。だが貧困な学齢児たちへ善意による対応が美談と化して定着し、未だに無批判に踏襲されている感があることをどう評価するかは現在の問題である。 研究期間全体を通して、五代五兵衛が大きな役割を果たした大阪盲唖院、大正期の新興実業家が深く関わった四恩報答会、そして久保田権四郎、新田長次郎が関わった徳風学校、有隣学校について、企業家の社会貢献という視点から先行研究に新たな知見を加えることができた。新たな知見とは、当時の政府(内務省)が推進していた感化救済事業が企業家に対して期待した役割が、大阪においては警察官との協働において果たされることが少なくなかったことを明確にした点であった。
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