2013 Fiscal Year Research-status Report
成年後見制度における社会福祉士の視点を生かしたアセスメントシートによる実証的研究
Project/Area Number |
24530754
|
Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
山口 理恵子 長野大学, 社会福祉学部, 准教授 (90582263)
|
Keywords | 意思決定支援 / 本人意思尊重と本人保護 / ベストインタレスト / ガイドライン / アセスメント / 成年後見制度利用支援事業 / 社会福祉士 / 身上監護 |
Research Abstract |
2013年度は成年後見制度実務において昨年実施した本人の意思尊重と本人の保護が拮抗する場合の支援方針について作成したガイドラインを、実践を行う社会福祉士の受任事例に適用しその結果について検証を行い、研究協力者等の意見をふまえ改善点について再検証を行った。この結果については論文「成年後見制度における本人不在回避のためのガイドラインの構築に関する研究 -意思決定支援における場面から-」として現在執筆中であり2014年度前期中に投稿予定である。また当初3年目に実施予定であった研究計画「社会福祉士によるソーシャルワークの視点に基づく身上監護に共通の方向性を示し、成年後見制度による支援を福祉サービスとして位置付けることの意義を多方面から検討する」については、障害者分野における成年後見制度利用支援事業の制度改正が行われたため、2011年にNPO法人シビルブレインと共同調査を行った結果を基礎に昨年論文を執筆し、投稿を行った。この結果「成年後見制度利用支援事業の課題からみる公的後見制度構築の必要性に対する考察-関西3府県市町村におけるヒアリングを中心に-」については、査読付論文「総合社会福祉研究」43号(5月刊行予定)への掲載が決定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度研究計画に掲げていた資料研究、「成年後見制度創設時における財産管理と身上監護における法的位置づけの変遷の検証」のうち特に身上監護における位置づけの検証については、上述の2013年度に投稿した論文および2014年度投稿予定の論文の基礎資料となった。ただし身上監護における支援方針決定の前提となるガイドライン作成に際しては、身上監護における過去の位置づけの整理とともに「障害者権利条約」の批准等、近時の日本の潮流に対して先駆的法制度ともいえる「2005年イギリス意思能力法・行動指針」(The Mental Capacity Act 2005)に対する先研究成果が重要な示唆を与えることを発見した。よって、これを社会福祉士による実践に照らし合わせ、丁寧に検証を行い日本の実態にあったものを作成することを重視した。 一方で今年度の実施計画としていた1.後見事務の内容から身上監護用と財産管理用の2種類のアセスメントシートを作成する。2.高齢者と障害者の特性に配慮したものを作成する。3.計4種類のアセスメントシートについて研究協力者を中心とした社会福祉士に使用を依頼し改善点について事例検討会等の場で話し合う。のうち、1.については作成している。2.については実践現場の声をできるだけ多く取り入れたいと考えるため試案の段階であり、今後も若干の検討・改良の部分がある3.については、2.が作成中であることから3.の達成度としては50%(2種類のアセスメントシート)となり、上記の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時に3段階目として計画していた「成年後見制度における支援を社会福祉サービスとして確立することの意義と検討する」については、概要に記載した通り障害者分野における法改正をふまえ、すでに1段階目で行っているため、2014年度については2段階目であるガイドラインの見直し及びガイドラインからアセスメントシートへの発展の可能性を探求する作業が中心となる.したがってアセスメントシートの作成を第一としながらその進捗状況次第で他の部分について若干変更も生じうる。また2段階目においてガイドラインを市民後見人に対して発展させることも計画の一部としていた。この点については各地の市民後見人養成の進展状況を鑑みながら、検証を行っていきたい。 今年度、筆者の在住地でもある長野県上田市において市民後見人養成が開始し、その運営委員となっていることから、実践とかかわる立場として何らかの示唆を得、研究に反映させたいと考えている。ただし養成が初年度であるため様々な課題も予想され、また市民後見についてはすでに先行地区において市民後見人による実践が開始しているため、場合によってはこれらの地区における実践状況を詳しく把握する必要もあるかと思われる。いずれにしても、アセスメントやガイドラインを作り出していくことで、最終的に社会福祉サービスとしての性質を備えた公的後見制度のあり方に対する重要な示唆となる可能性を重視しており、この点について今年度で達成できなかった点やさらに探求を深めたい点については2015年度以降の研究課題として引き続き研究を行っていきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年度については特にアセスメント検討の部分について昨年度同様複数の社会福祉士にヒアリングを行う予定であるため、都合によってはヒアリングを分けて実施することも考えられるため旅費を多く確保する。 (1)物品費 160,000(先行研究を含む関連書籍、自治体報告書、学会誌等)(2)旅費 300,000(ヒアリングにおける上田⇔大分間又は上田⇔福岡間 計年3回)(3)人件費・謝金 50,000(社会福祉士5人で想定)(4)その他 50,000(会場使用料、研究協力者学会費)
|