2015 Fiscal Year Research-status Report
戦前日本の地域福祉の特質に関する基礎的研究―道府県統計書にみる救済構造―
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24530755
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
池本 美和子 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (90308932)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会事業 / 地域福祉 / 道府県統計 / 戦前期社会事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
大正期の29府県データにみる社会事業関連の特質は以下の通りであった(未処理府県17)。 1.各府県の産業構造をみる前に、人口規模との関連では次の傾向がみられる。1913年時点で人口190万人を超える大阪、兵庫、愛知、福岡、新潟(東京は本年度は未処理)であるが、この時点で公費救済では滋賀県が最も多く、新潟、広島と続く。大正末期では公費救済は大阪が最も多く、石川、岡山と続く。恤救規則に関わる救済は、その制限性・慈恵性から人口規模との関連性は薄いと見なければならない。さらに、明治末の内務省通牒によって国費負担を無くした千葉、大阪、滋賀、長野、福井等の中で、大阪と滋賀は大正末期に国費負担を復活させている。また大正期を通じて国費負担のみで経過したのは三重県である。人口規模と連動しているのは棄児養育数・行旅病人及死亡人数に伴う費用負担である。 2.民間団体による救済活動では、日本赤十字、愛国婦人会が最大の組織活動であるが、会員数と年醵金は人口に連動しているとは言えない。その他の団体では海員掖済会、帝国軍人後援会、尚武義会、帝国水難救済会などがあるが、地域独自の組織である。海難事故以外は軍人遺家族救護が多い。 3.財政では、特別会計に計上される府県有財産として罹災救助基金のほか慈恵救済基金、賑恤資金、軍人援護資金、社会事業資金ほか10件ほどあり、普通会計の歳出の外に多様な救済関連資金が特別会計に設定されていることが判明している。さらに府県郡市町村の各レベルで社会事業に関連する債権が発行されている。特に経済保護事業に関連したものが多い。 4.その他では下等米価格の動向をみると米騒動時に2倍以上の価格になり、それは中等米、上等米の変動を大きく上回り、米騒動が低所得者の生活を破壊するようなものであったことが分かる。それに対して市町村レベルの救助費が一時的に跳ね上がっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
復職後の体調が安定せず、予定していた大正期のデータ入力が完了していない(17府県残)。 また明治期と昭和期のマイクロフィルムコピーも一部にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度については、大正期の未処理データの入力と解析。本学所蔵の明治期マイクロフィルムの複写および同志社所蔵の昭和初期のマイクロフィルム複写を進め、随時入力作業と分析をすすめる。今年度が最終年度となる予定であるが、平成25年末から26年9月までの休職・療養期間にともなう遅れがあるのでさらに1年延長を申請して、未収集データの複写と入力および総合的解析をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
復帰後の体調が安定せず、明治期府県統計書の複写(約23万円)および昭和初期のマイクロフィルム複写(約18万円)を次年度送りとせざるを得なかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は主に、明治期府県統計書の複写(23万円)、昭和初期のマイクロフィルム複写(18万円)にもとづくデータ処理・解析、昭和初期のデータ処理(アルバイトによる実施 10万円)を進める。最終年度として予定していた学会報告(5万円)および基礎データ資料集作成・配布(37万円)についてはさらに一年延長申請を行って進めていくこととしたい。
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