2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530757
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
大森 弘子 佛教大学, 福祉教育開発センター, 講師 (90445974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 仁 梅花女子大学, 心理子ども学部, 教授 (90549669)
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Keywords | 子育て支援 / 保護者 / 保育士 / 専門性 / 社会的養護 |
Research Abstract |
1.研究目的・・・「育児不安を抱える親の保育ニーズの多様化」に着目し、それに応えるために社会的・構想的保育システムの構築を目指した。今後の保育の方向性を明らかにするために、保護者が期待する保育士の専門性についてアンケート調査を実施した。 2.研究方法・・・ アンケート調査法を用いた「保育士のキャリアパス」における6構成要因と保護者が期待する保育士の専門性が一致するかを検証する仮説検証的研究である。調査対象者は保護者(296名)で、平均年齢は35.22歳(SD=6.01)であった。 3.研究結果・・・保育士のキャリアパスで考案された保育士の専門性について、保護者がどのように解釈しているのかを、保護者が期待する保育士の専門性の構成要因として因子分析を行った。その結果、保育士の専門性は「食育・発達支援」「子育て支援」「社会的養護」の概念により構成され、各要因には正の相関関係があることが明らかになった。保育士のキャリアパスで考案された保育士の専門性と保護者の期待する保育士の専門性には、構造化の差異が存在することが示唆された。 4.研究考察・・・保育士の専門性が分化される中で、現状の保護者の期待に応えるためには、専門性によるチームとして援助することの必要性が示された。中学校・高等学校卒よりも高専・専門学校・短期大学卒以上の保護者の方が、また、非正規雇用よりも正規雇用の保護者の方が保育士の専門性に「社会的養護」を期待していることが有意に高かった。 5.研究成果・・・保育士の専門性が分化される中で現状の保護者の保育期待に応えるためには、保育士をはじめ看護師や栄養士などの子どもを支援するチームで、「食育・発達支援」「子育て支援」「社会的養護」を必要とする親子を援助することの必要性が示されているといえよう。 (大森・太田・水谷(2014) 佛教大学社会福祉学部論集第10号,1-10.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と研究分担者の子育て支援協力園や講演先でのアンケート調査が順調に進んだ。また、2013年2月のアメリカ調査の研究成果を全国保育士養成協議会第52回研究大会(2013.9.6)「育児不安と保育支援の日米比較」のタイトルでポスター発表を行った。アメリカは国連人間開発指標(Human Development Index:人々の生活の質や教育水準の発展度合いを示す指標)で、(日本が世界10位前後を低迷する中、)世界13位(2009年)から世界4位(2010年)へと大躍進している。このアメリカの中でも、ランタマン法(The Lanterman Act)による福祉先進行政区画がカリフォルニア州である。日本の保護者と在米日本人保護者との保育士の専門性期待を検討した所、フロアから多くの示唆をいただいた。アメリカCa州S市にはParents Help Parents(=PHP)の中にハンディキャップがある子どもの保護者たちが組織するサポートグループがある。PHPはIDEA(障がいをもつ個人のための教育法)を後ろ盾に、システム・常識の違いを日本語で学びつつ、保護者同志が精神的にも支え合うような保護者の自立をサポートしてる。本調査で日米間で保護者の育児不安に有意な差がなかった要因の一つは、このPHPの支援がアメリカの保護者を精神的に支えているを考えられた。アメリカ調査の因子分析の結果から、保護者が期待する保育士の専門性は3因子が抽出された。しかし、保育士会のキャリアパス構想が認知する保育士の専門性は6因子であり、保育士会のキャリアパスとのズレが明らかになった。今後の研究の方向性が以下のように推進する。(1)日米比較の育児不安と保育士の専門性については、今後さらなる調査と情報収集を進めて継続的に研究を行う。(2)“親子・家庭支援” “健康・発達支援” “食育(知育・徳育・体育)支援”の哲理をより精緻化してく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
親の援助要請を促進する3 Gate model(太田・高木,2010)による段階的保育支援システムを構築する。具体的には、1 st Gateにおいて、保育現場で「苦しくて助けてほしい」と悩んでいる親のスクリーニングを行い、2nd Gateにおいて、同じ子育てに悩む複数の親が集まり、情報や情動を分かち合い、子育て支援による育児効力感の回復と達成感を感じ、3rd Gateにおいて、セルフ・ヘルプ・グループとして自主的・自発的な活動行い、助け合いの規範に気付きながら、悩みを共有して親はエンパワメントされていく。逐語録の分析に基づき、親に内在化された問題が何か、どのような働きかけが親の問題解決に有効であるのかについて実証的に明らかにし、親役割規範の形成を行う。さらに、2014年11月(於:日本乳幼児教育学会)、アメリカの海外研究協力者(山村)を指定討論に招いてのにシンポジウムを計画している。 また、国際化が進行している中、日本で猛烈な働き方をし子育てをしているインドネシア介護福祉士6組の家庭に着目する。彼らは将来高齢化が予測されるインドネシアのケアに貢献したいと考えているが、彼らが日本で子育てをし、何に悩み、地域との繋がりの必要性を考えた上でどのような子育て支援を求め、地域での外国人労働者受入れを活性化するボランティアの創出についても研究を推進したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内調査を優先したため、海外情報収集を2014年度に行う事とした。また、研究成果について日本乳幼児教育学会の自主シンポにアメリカ・ボストン在住の山村慧氏をシンポジウムの指定討論者として招聘しアメリカの子育て支援の最新情報を収集するため、2014年11月に資金が必要となった。 (1)海外旅費・シンポジウム指定討論者招聘・情報収集であり、費用対効果を考えて有効に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(8 results)