2012 Fiscal Year Research-status Report
職員の「意識変容」に働きかける職場環境・職員集団づくりのためのモデルの構築
Project/Area Number |
24530758
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
岡本 晴美 佛教大学, 社会福祉学部, 准教授 (80331859)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 専門性の形成・継承 / 人材育成 / 児童養護施設 / 職場環境 / 職員集団 / ソーシャルワーク / 研修プログラム |
Research Abstract |
研究期間3か年の初年度にあたる平成24年度は、次の2つの研究課題を設定した。 1.これまでの調査研究結果、先行研究および他領域の学問的知見の批判的検討と融合による理論的基盤の整備と分析枠組みの明確化、2.児童養護施設職員を対象としたインタビュー調査によるデータ収集・分析による理論的基盤および分析枠組みの修正・補強である。 人材育成のプロセスにおいて必要とされる職員の「意識変容」を促す具体的なアプローチ(実践モデル)の構築を目指す本研究において、当該年度の研究実績は、次の2点に集約される。 「意識変容」を促すアプローチの検討を行うためには、まずは、「意識変容」を阻害する状況、構造上のメカニズムを理解することが必要となる。そのことを理解するための理論的枠組みとして、MRIの理論的アプローチが有効であることを職員を対象としたインタビュー調査の事例から導きだすことができた。 また、人材育成において重要な点として、「レディネス」の概念を具体化することが重要であることも合わせてインタビュー調査から明らかにすることができた。「レディネス」とは、学習成立のための準備性のことであるが、人が育つ現場では、レディネスとして、まずは、所属感を育む働きかけが必要であること、そのうえで、職業的アイデンティティの形成を支える仕組みを構築していくことが不可欠である。所属感の重要性を強調することに新奇性があるとは言えないが、人材育成の基盤として、人材育成を行う側がこれまで以上に、自覚的に、研修内容や提供方法において、所属感の醸成を図る形で設定する必要があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、モデル構築のための理論的基盤の整備を主たる目的としていた。その点に関しては、社会福祉の領域における理論的基盤の脆弱性を補強するために、教育工学、心理学、社会学、経営学、哲学など他の学問領域における人材育成の知見に学び、応用可能性を見出すことができた。 また、社会福祉領域における理論化のために有益と思われるリフレクション(reflection)の概念に着目する必要があることについて、研究会等への参加、および職員を対象とするインタビュー調査から示唆を得ることができた。 上記研究調査から得られた諸点から、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に引き続き、2つの児童養護施設(大阪府・滋賀県)を対象としたインタビュー調査を継続する。 滋賀県の児童養護施設では、職員研修の体系化の検討を前年度末から開始しており、今年度は、実際に職場内においてOJTを含めた職員研修(人材育成の試み)を実施しながら、研修内容・提供方法・提供時期の検証を行う予定である。 また、大阪府の児童養護施設では、職員の専門的な視点の獲得・変容、かかわりの際の具体的なアプローチの方法を学ぶために、特にリーダー候補である中堅職員を対象とした研修内容の検討を開始しており、引き続き、職員とともに集団的に検証を行いながら、内容の精緻化を図る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度分の研究費の一部を平成25年度に使用することとした主たる理由は、以下の2点である。 1点めは、調査研究を現場との協同(協力)のもとに行っていること、すなわち、現場へのフィードバック、業務遂行に資する形で研究成果を蓄積していくことを実現するために、調査研究計画の内容の一部変更を行う必要があったため。 2点めは、調査研究の過程で、他の研究領域の知見を含め、理論的な基盤のさらなる充実の必要性が確認されたため、海外文献の入手、研究会・学会等への積極的参加を計画したため、である。 平成25年度は、引き続き、児童養護施設(大阪府・滋賀県)の職員を対象としたインタビュー調査の実施、施設長および幹部職員へのフィードバックを行い、人材育成モデルの構築を現場との協同で行う。また、他の研究領域の知見に学ぶため、主として東京、広島で開催される研究会・学会への積極的参加を行い、理論的基盤の充実を図る。 必要に応じて、他の福祉施設へのインタビュー・アンケート調査を企画する。
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