2014 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設における集団的逸脱行動に対応する実践モデル開発に関する研究
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24530764
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
遠藤 洋二 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (90588716)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 児童間暴力 / マニュアル / ワークショップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、児童養護施設に入所する児童による身体的、性的暴力など暴力行為を中心とした集団的逸脱行動によって、危機的な状況となっている児童養護施設において、その緩和、あるいは解決に向け、児童相談所(措置機関)・児童養護施設(当事者)等が実施する介入的アプローチの方法を開発しようとするものである。これまでの調査で多くの児童養護施設においては、児童の暴力(特に性的暴力)の対応に苦慮しており、実践場面で活用できるマニュアルの必要性も認識しているが、マニュアルがない、あるいはあったとしても形骸化している場合も多く、特に経験の浅い職員が不安を抱えながら職務に就いていることが分かった。 これまで実施してきた調査、分析を通じて、児童間の暴力を誘発される要因は個人要因にとどまらず、施設システムそのものにも存在し、施設システムを変容されることで暴力のリスクを軽減することも可能であることが示唆された。 また、児童の暴力をきっかけに施設運営そのものが危機的な状況になった施設では、初期対応が不十分であった事例が数多くみられた。したがって、今後はいくつかの児童養護施設と協働で、実践場面で活用できる各施設独自のマニュアルをワークショップ形式で策定する予定である。 これまでに4か所の児童養護施設とワークショップを通じたマニュアル策定の予備的協議を終了しており、1か所においてモデル実施した。2015年年度はこれまでの調査結果を精査し、ワークショップの基礎的データに関して客観的な指標を抽出するととともに、ワークショップのプログラムを確定させたうえで、児童養護施設において実施していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで児童養護施設の児童間暴力を中核とした集団的逸脱行動の実態を把握するため、10か所の児童養護施設に対して、のべ19回のインタビュー調査を実施した。インタビュ内容は了解を得た上で録音し、後日、逐語化している。その中で特に本研究テーマに適合する逐語録複数を分析し、児童の逸脱行動を強化する施設所システムを抽出しようとしている。 また、児童自身の問題行動を理由に児童養護施設から児童自立支援施設へ措置変更される児童の実態を破格するため、全国58カ所の児童自立支援施設のうち、児童自立支援施設からの措置変更が大半を占める国立施設2箇所、実質的には自立援助ホームとして機能している1箇所を除く55五施設において、平成21年度から平成23年度までに児童養護施設施設から児童自立支援施設へ措置変更された児童(以下、「措置変更児童」。)全件を対象としたアンケート調査を実施した。措置変更児童との比較のため、協力の得られる施設に、同期間に一般家庭から入所した児童(以下、「非措置変更児童」全件のデータ作成を依頼した。 以上の質的、量的調査の分析を先行研究と比較検証しながら、児童間暴力対応マニュアルの基礎となるデータを収集し、マニュアルの要素となる「キーワード」を抽出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの調査、児童養護施設の運営そのものが危機的な状況に陥った事例を中心に詳細な分析を行い、マニュアルの構造を明示したい(叩き台)。 さらに、以下のプロセスを通じて、実践マニュアルとして活用できるものとしていきたい。 ①「叩き台」を用いた実践を、実際場面(児童養護施設)で試行する ②試行結果を分析・評価し、「叩き台」を改良する ③実践マニュアルとして完成させる 児童養護施設へのインタビューでは、マニュアルが存在しない、あるいはマニュアルがあったとしても活用していない事例が多く見られることから、マニュアルの策定に児童養護施設職員が主体的に参加できる仕組みを模索したい。
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Causes of Carryover |
当初、アルバイトで行うことを想定した作業を研究者、共同研究者で分担したため、人件費の支出が抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の当初から研究協力者として関わってきた児童自立支援施設職員が不慮の死を遂げたことを踏まえ、最終年ではあるが、今後も本研究を継続していく予定をしているため、新たに研究協力者として施設職員を加えることを考えている。当該研究協力者の旅費等に充当したい。
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Research Products
(3 results)