2014 Fiscal Year Research-status Report
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24530767
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
才村 眞理 帝塚山大学, 心理学部, 非常勤講師 (50319919)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ライフストーリーワーク / ライフストーリーブック / 社会的養護 / 生殖補助医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.児童施設等の子どもへのライフストーリーワーク(以後、LSWと略)の実践方法を研究した。 施設職員・里親等におけるLSWの考え方や必要性、その実践環境の現状について調査研究するため、6回の講演会において205名へのアンケートを実施した。LSW実践者向けトレーニング・プログラムをまとめた冊子を日本版実践ガイドの一環として作成した。このトレーニングプログラムを、児童相談所や児童福祉施設職員向けの研修を実施した際に取り入れ、その効果についても研究した。また、イギリスより里親支援の団体(BAAF)より専門家を招聘し、LSWのトレーニングとスーパービジョンについて学んだ。すでに作成した日本版実践ガイド「LSWをはじめるにあたって」の効果についても研究した。次に、児童施設等の子どもに対して、LSWについて説明する冊子を作成した。以上、LSWの日本版実践をめざしたマニュアル作りを研究した。 2. 生殖補助医療により生まれた子どもへのLSWの実践方法を研究した。 生まれた子へのLSWとしての真実告知、出自を知る権利行使の実践ガイドの作成を視野に入れた、不妊カウンセラー3名へのインタビューを実施した。前年度に引き続き、生殖補助医療で生まれた人にとっての、ライフストーリーブックを使用したLSWの有効性について研究した。この研究方法として、引き続き、生まれた人へライフストーリーブックを使用したLSWを実施するとともに、ナラティブにインタビューを行った。(3年間継続)作成した卵子提供の告知のための絵本の効果について研究するため、絵本を送付した70名にアンケートを送付し、59名が回答し、内容について考察し、真実告知が出来るための準備プログラムについて検討した。 以上、真実告知や出自を知る権利行使の実践に向けて、その可能性を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童施設等の子どもへのライフストーリーワークの実践方法について、順調に進展したと言える。児童施設等の子どもへのライフストーリーワークの実践方法について、より具体的な指南書としてのトレーニング・プログラムを考案し、成果物としての冊子にまとめることができた。また、イギリスの専門家を招聘し、より専門的なトレーニングやスーパービジョンの方法について学ぶことができた。そして、その実践環境の現状を捉え、今後、どのようにライフストーリーワークの理念や手法を広めていくべきかについて実践的に研究することができた。 生殖補助医療で生まれた子どもへのライフストーリーワーク実践方法の研究については、予定通り進んだとは言えない。つまり、実践するに当たっては、これまでの価値観の大きな変容(不妊夫婦は精子提供や卵子提供で子どもを作ったことを秘密にした方がよいという価値観を持つ)を求めることとなり、真実を明かせないことの深刻さが浮き彫りとなり、日本で実践できる土壌がまだ十分整っていない現状が明らかになったためである。 真実告知や出自を知る権利行使の実践を視野に入れたライフストーリーワークの実践マニュアルを作成する予定であったが、今回の研究ではマニュアル作成までは到達せず、ライフストーリーワークの実践方法のさまざまなパターンの提示と言う段階の研究になった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.児童施設等の子どもへのライフストーリーワーク(以後、LSWと略)の実践方法を研究する。 施設職員・里親等におけるLSWの考え方や必要性、その実践環境の現状について引き続き調査研究する。LSW実践者向けトレーニング・プログラムをまとめた冊子を使用しながら検証し、より有効なトレーニング・プログラム内容に更新する。また、イギリスの専門家から学んだスーパービジョンについてもその方法について日本版を作成する。すでに作成した日本版実践ガイド「LSWをはじめるにあたって」の効果についても引き続き研究する。また、これまでは児童相談所職員主体の実施マニュアルであったが、全国のニーズより児童施設職員が主体となって実施する方法についても研究する。以上、より幅広い視点でのLSWの日本版実践をめざしたマニュアル作りを研究する。 2. 生殖補助医療により生まれた子どもへのLSWの実践方法を研究する。 生まれた子へのLSWとしての真実告知、出自を知る権利行使を視野に入れた実践のさまざまなパターンを研究し、より具体的に実施が可能となるよう、成果物を作成する。 この研究方法として、LSWを実施した生殖補助医療で生まれた人と共に、さまざまな分野の人たちの参加を呼び掛けた勉強会を開催し、広くLSWの理念・実践方法について検討するとともに、実施可能なパターンについて研究する。絵本についてのアンケートを分析し、LSWを実施する中で絵本の使用の可能性について研究する。以上、真実告知や出自を知る権利行使の実践に向けたライフストーリーワークについて、その可能性を含め、実践方法について研究する。
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Causes of Carryover |
おおむね計画通りに研究を遂行したが、以下の理由で当初の予算よりも低い予算で研究ができたためである。1つは、平成26年度に作成した、子どもに説明するための冊子と、トレーニングのための冊子の印刷費用が、当初見積もった額より大幅に安価で作成できたため。2つ目は、不妊カウンセラーへのインタビューのための費用が、当初予算を組んだ額よりも、研究代表者が他の依頼講演の際に、インタビューを行ったため、旅費がかからなかったため。その他、研究協力者との研究会については費用のかからない会場を確保でき、インタビューについての費用もほとんどかからなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会にてシンポジウムを企画 シンポジストの旅費、研究代表者の旅費 約15万円。生殖補助医療で生まれた子どもと共に勉強会を開催 生まれた子ども2名、研究代表者、司会者の旅費、会場費、お茶代、資料郵送代等 約20万円。生殖補助医療で生まれた子どもへのライフストーリーワークの様々な手法の印刷費用 約20万円。専門的知識の享受のため施設職員を招へいし講演会主催 旅費・謝礼 約2万円。翻訳代 約9万円。成果物の郵送費用 約3万円。
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