2012 Fiscal Year Research-status Report
まちの中で暮らす:沖縄のコミュニティにおける高齢期の地域居住システム
Project/Area Number |
24530772
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Okinawa University |
Principal Investigator |
西尾 敦史 沖縄大学, 人文学部, 教授 (40389721)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 地域居住 |
Research Abstract |
平成24年度は、コミュニティの地理的な範囲を特定し、分析の指標を検討、コミュニティの特徴を明らかにし、コミュニティの類型化を行うことを目的とし、沖縄県内の地理的コミュニティの基礎データを収集し、それに加えて社会資源および住民意識、自治会加入率、居住タイプ、祭礼・行事等の福祉文化関連データの収集を行った。 その中で、県内市町村のすべてに設置されている高齢者の相談支援機関、地域包括支援センターおよび在宅介護支援センターの働きに着目し、地域ネットワークづくりおよび連携に関する実態調査を行った。その結果、沖縄県内の在宅介護支援センターは、地域巡回や訪問に対する意識が高いが、地域のケアマネジャーや社会福祉協議会との連携は相対的に弱く、また全般的にボランティア・NPOとの連携の割合が低く、橋渡し型の地域資源が少ないことが明らかになった。 また、新たに住環境としての集合住宅に注目し、県内の市営・県営、公社による団地における地域居住、コミュニティ活動の実態に向けた調査に着手した。県内には、本土のような大規模な公団団地は存在しないものの、高度経済成長期に公営住宅がつくられ、またその団地における地域見守り活動等に注目に値する取り組みがみられる。さらに、団地のみならず、高齢期の地域居住において非常に重要な要素として浮上してきた「孤立」と「見守り」の実態について市町村社会福祉協議会の取り組みから資料収集を行った。 また、一時的なコミュニティにおける地域居住の実態について、東日本大震災後に設置された仮設住宅におけるコミュニティづくりについて調査を行った。 これらの基礎調査の中から、前提としていたソーシャルキャピタルの分類、都市部/農村部=アソシエーション/コミュニティ、結合型(bonding)/橋渡し型(bridging)を援用したコミュニティの類型化に向けての示唆を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎調査の範囲の広さと整理、研究成果の集約については課題があるものの、当初の研究の目的の段階については、おおむね順調に進展していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
高齢者の地域居住を可能とするコミュニティの類型化については、本島都市部、基地周辺、農村地域、移住者コミュニティ、離島等に分類を行うが、新たに団地(集合住宅)を加えることとする。 そのうえで、類型化したコミュニティモデルをもとに、フィールドワーク(滞在調査)を行い、介護を必要とする高齢者の生活を基本にした事例研究を行う。その中で、高齢者の生活の広がり、社会との関係性のあり方、また、それらがその人の生きる尊厳とどのように関わり合っているのかを記述し、明らかにする。世代間の交流、とくに子ども世代との交流については、重要な視点として観察を行い、新たに「孤立」と社会関係についても事例研究に加える。 また、地域居住および相互扶助を支援する専門機関としての地域包括支援センターおよび在宅介護支援センターに期待する役割機能を明らかにするために、コミュニティモデルごとの事例調査を行う。併せて、東日本大震災後の仮設住宅におけるコミュニティについても「孤立」の状況の変化について調査を行う。 そのうえで、「地域地図」手法を用い、経済生活、子ども世代との交流、まちの資源とのかかわり、食、外出先、ゆんたく場等などの地域生活の実相および、フォーマルケア・ノンフォーマルケア・インフォーマルケアの状況、社会関係等を記述しマップ化する。 そのため、基礎データの集約・類型化に加え、沖縄の各地域コミュニティへのフィールドワークを中心的な調査課題として実施する。 こうした福祉視点を加味した事例調査により、沖縄のコミュニティの特性と多様性を描きだし、地域居住を可能にする力を見出していく。さらに公共政策については、地域介護資源の計画的配置のみならず、「日常生活圏域」「地域包括ケアシステム」のあり方について示唆を得たいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文献収集・購入 60千円 事務消耗品費 40千円 コミュニティフィールド調査・事例調査「地域地図」作成(5か所) <8月~9月、12月~3月 沖縄および東北> 600千円 通信費 30千円 調査結果入力謝金 70千円 研究成果発表のための学会出張費(2回)<10月、2月> 200千円
|