2013 Fiscal Year Research-status Report
まちの中で暮らす:沖縄のコミュニティにおける高齢期の地域居住システム
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24530772
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Research Institution | Shizuoka University of Welfare |
Principal Investigator |
西尾 敦史 静岡福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (40389721)
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Keywords | 地域居住 / 居住サポート / 地域包括ケア / コミュニティケア |
Research Abstract |
平成25年度は、地域居住(エイジング・イン・プレイス)を可能にするコミュニティの条件を検討するためのフィールド調査を沖縄県内のいくつかの地域で実施した。 沖縄市においては、高齢単身化がすすむ市営住宅に設置された交流室およびLSA相談員による住民交流促進機能および社会福祉協議会が実施している高齢者居住支援モデル事業の調査を行った。高齢や障害があるために居住が困難になっている状況に対する民間を含めたサポート体制は非常に重要な取り組みであることが明らかになった。 糸満市においては、ある農村集落において、認知症高齢者の介護を行っている家族のインタビュー調査を行った。背景には戦争による家族の離別があり、戦争の傷跡がいまだに影響している中で、地域居住が可能になるためには、住民の認知症に対する理解と見守り体制が必要であることが明らかになった。 2つめには、沖縄における地域包括ケアの具体的な事例調査を行った。県内5つの地域をとりあげ、支援困難事例を中心に、地域包括支援センターがどのように地域の人的なネットワークを構築しながら、支援を行っているのか、個別支援・地域支援両方の観点から、包括ケア機能のコミュニティの特質に合わせたあり方について、地域社会にかかわる専門職としてのコミュニティソーシャルワーク機能との関連を含めて分析を行った。 3点めには、基本的な文献・言説分析であるが、歴史的に地域居住の前史となる施設ケアから地域ケアに転換するに至る施設解体・脱施設思想の生成・転換過程の文化史的考察を行った。 さらに、東アジアに位置する沖縄のコミュニティと高齢者ケアの特性を相対化するため、香港のコミュニティと高齢者地域ケアの現状についての調査を行った。社会保障制度の違いが大きいものの、社会的孤立が深刻化している状況など、日本・沖縄の特徴を相対化しうる視点を得ることにつながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域地図の作成に至るフィールド調査を対象地域については、想定したモデル地域すべてをカヴァーするには至っていないが、地域居住の歴史文化研究や、東アジアの家族・ケアとの比較研究の視点を加えており、当初の研究の目的の段階については、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度にあたり、高齢者の地域居住を可能にするコミュニティモデルについては、設定したコミュニティの類型化を基本に、住民の関係性を創出する機能、地域居住を支える機能などに関係する、あるべき社会資源のモデルを提起する方向でまとめを行いたい。 その際、2025年を目途にした地域包括ケアの働きとの関連を明らかにすると同時に、地域居住を支える社会資源として、グループホーム・小規模多機能型居宅介護などの地域居住を支える介護資源、入所施設のほかに、関係性をひらく、コミュニティカフェや自宅開放などの事例も踏まえて、自宅や職場以外のゆるやかない関係がつくられる可能性のある場を「サードプレイス」としてとらえ、そのコミュニティに対しての機能のあり方を考察する。 また、日本の中の沖縄のコミュニティの特質を相対化するためにも、共通するケアの価値観を共有する東アジア諸地域との比較の視点を導入し、家族・地域・国家・市場のベストミックスがどのように可能になるのかという視点を加えて、コミュニティケアのあり方を模索する。 そのうえで、公共の福祉政策がどのようにコミュニティの力を活用しつつ、高齢者の地域居住を可能にするのか、福祉政策のあり方への政策インプリケーションを得るための研究を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、沖縄フィールド調査の旅費費用が当初想定していたよりも安価に抑えることができた(航空券代および宿泊費用等)ことによる。 以下の経費として使用する計画がある。 地域居住およびコミュニティ関連の文献研究のための図書購入。 沖縄フィールド調査として、未実施地域の調査を充実させるとともに、沖縄のコミュニティ・地域居住を相対化するための東アジア地域における調査を実施を予定する。あわせて、研究経過を報告発表するための学会等への出張旅費として確保したい。
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