2014 Fiscal Year Annual Research Report
善行を罰する社会-「過大協力」の抑制現象に関する社会生態学的アプローチからの検討
Project/Area Number |
24530781
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
結城 雅樹 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50301859)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 文化 / 協力 / 関係流動性 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究知見、およびその後の検討を踏まえ、本年度は下記の2件の実証研究を行った。その結果、昨年度以前の研究結果、および理論仮説からの予測を大きく裏切る結果が得られ、本研究の仮説を根本的に再考する必要性を促すこととなった。 研究1:「突出協力行動に対する評価の日米比較」アメリカ人参加者を対象とした先行研究 (Parks & Stone, 2010)において、突出協力者が衡平的な協力者より否定的に評価され、集団から排除されやすいことが示されている。本研究は、日本人参加者を対象にしてこの研究の追試を行うことを通じて、低関係流動性社会である日本においてより強い否定的評価と排除が見られるだろうとの予測を検証した。だが結果は予測とは正反対であり、過大協力者は衡平的協力者と比べて高い評価を受け、より集団に残ってほしいと評価された。このような結果が得られた理由として、1) 参加者間の関係性が、オリジナルの研究とは異なるものであったこと、2) そもそも仮説が誤っていること、の2つが考えられた。 研究2:「多国間比較調査」ここまでの研究では、本研究の主要な独立変数である関係流動性が、日本対米国など2値の変数として捉えられるか、もしくは場面想定法で実験操作されていた。この限界を克服するため、関係流動性に多様性があると考えられる世界39ヵ国の人々を対象とした大規模なインターネット調査を実施した。その結果、再び予測とは正反対に、関係流動性が高い国の人々ほど、自分が過大協力者であることに気付いたときの喜びが低く、自分以外の人々は過大協力者を否定的に扱い排除するだろうとの期待を持っていた。 以上のように、最終年度の研究では、昨年までの知見とは概念的に大きく矛盾する結果が得られた。このことは、本研究の理論仮説に未解明の問題が潜んでいることを強く示唆しており、今後の重要な研究課題を提起するものである。
|