2014 Fiscal Year Annual Research Report
環境・健康リスクの事例に基づく利害調整の手続きと結果の評価に関するゲーミング研究
Project/Area Number |
24530786
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉浦 淳吉 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (70311719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 肇子 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (70214830)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リスク / 環境 / 健康 / ゲーミング・シミュレーション / 利害調整 / 合意形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの実績をもとに二つの観点から最終的なゲーミング・シミュレーションの実験課題の作成を行った。一つは環境・健康に関する利害調整ゲームの体系化であり,もう一つはゲーミングにおける役割に関する理論化である。具体的には複数の選択基準をもつ住宅を家族で選択する事例として設定し,状況や選好の違いがある複数の役割の参加者からなる実験を行った。決定の手続きとして,個々の選好を可視化する意思表示ボードを用意し,議論の展開に応じて意思の変化をお互いに観察できる場面を設定した。この課題は集団意思決定において,予め設定された4つの態度属性を個々のプレーヤが重みづけし,集団で複数の選択肢から1つを選ぶ際の論点の比較プロセスを検討した。第1実験では,意思表明の可視化条件の違いを検討した。その結果,意思の可視化のない手続きよりも,可視化された方が得点は高く,より詳細に可視化された条件では,初期の選好と一致した参加者の得点が一致しない参加よりも高くなっていた。事後評価の結果から,意思表示ボードを活用し,自己主張できたと評価するプレーヤほど,得点が高くなっていた。意思表示ボードは他者の考えの変化の読み取りと自己主張を支援し,それにより初期態度と一致した決定につなげるための交渉に有用であることがわかった。第2実験では,選択肢の一つを省エネルギー住宅と入れ替え,住宅選択と経済性および環境リスクへの対処と合意形成との関連を検討した。結果として省エネルギー住宅が選択される頻度が上昇することはなかったが,低年齢の参加者の意見が主張する意見と一致した結果になる頻度が上昇した。合意形成の論点の1つにエネルギー問題を含めることが,将来世代の選好に配慮する結果となったことが示唆された。上記のような利害調整ゲーミングの中での役割付与による体験が、現実の利害調整場面への熟慮を促すことが示唆された。
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