2012 Fiscal Year Research-status Report
社会情動的選択性から見た高齢者のソーシャルネットワークに関する研究
Project/Area Number |
24530788
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
渡部 諭 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 教授 (40240486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 泰秀 青森大学, 社会学部, 教授 (40226189)
吉村 治正 奈良大学, 社会学部, 准教授 (60326626)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会情動的選択性 / 高齢者 / ソーシャルネットワーク |
Research Abstract |
今年度は、文献調査と予備調査を実施した。本研究は、調査によって高齢者のソーシャルネットワークを抽出し、それをマルチレベルモデルによって分析を行うことによって、社会情動的選択性理論から予想される高齢者のソーシャルネットワークの特徴の検討を行うものである。したがってまず、内外の多数の文献調査から着手した。各種データベース、なかでもアメリカ心理学会GOLD electronic database packageを利用した文献収集を行った。 それと並行に、10月後半から11月前半にかけて、研究分担者澁谷を中心に予備調査を行った。対象者は自立高齢者12名(男性6名、女性6名、65歳以上70歳未満が2名、70歳以75歳未満が2名、75歳以上が2名)である。調査票としてJGSSのソーシャルネットワーク調査票を用いた。調査の後にインタビューも実施した。この予備調査で判明したことは、70歳以上でも外に出て仲間をつくり、活発に活動している者が多かったことで、あくまで、自立できている高齢者が調査対象なので、高齢者全体の評価にはつながらないが、少なくとも元気な高齢者は外に出ているということが明らかになった。現在予備調査のデータを分析している最中であり、特に分散が大きい質問項目を中心に今年度の本調査に用いる質問項目を選定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会情動的選択性、ソーシャルネットワーク、ネットワークサンプリング、マルチレベル分析に関する文献調査はほぼ終了し、実施した予備調査データ分析の結果を見ながら、今後は今年度の本調査で用いる調査票の設計および仮説の作成を行う予定である。以上のようにおおむね順調に進展しているが、敢えて言えば、ソーシャルネットワーク調査のための標本抽出法はかなり工夫が必要であることを再認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず前年度に実施した予備調査のデータ分析を行う。この分析は通常の分析の他に項目反応理論を用いるため、この統計技法を専門とする澁谷が担当する。この分析結果と文献調査より得られた成果に基づき本調査で用いる調査票を作成する。一方、仮説の再検討は2段階の分析で行われ、第1段階は通常のネイマン・ピアソン流の統計分析を、第2段階はブートストラップを利用したリサンプリングに基づく分析を行う。その後の本調査では、無作為標本抽出を行う。調査対象者数は、本研究課題の参加者が居住する秋田・青森・奈良各地域で各1000名の合計3000名である。高齢者には5群のサブグループを設定する関係上oversamplingを行う。また、マルチレベル分析の検定力との関連から望ましい標本数が得られるまで標本抽出を継続する可能性もある。ただしソーシャルネットワーク調査のための標本調査法はかなり困難な点を伴うことが予想されるので、どのような標本抽出が望ましいか検討中である。調査票の再構成を行い、印刷所に印刷を依頼する。調査対象地域の秋田は渡部が、青森は澁谷が、奈良は吉村がそれぞれ担当するが、全体の監督・指示は渡部が担当する。各調査地域において、選挙人名簿または住民基本台帳から無作為抽出された各1000名を対象にディルマン法を用いて行われる。前年度のフィールド調査で作成されたマルチレベルモデルを、今度は無作為抽出大標本に基づいて再構築する。モデルのトリミングは、オープンソースの統計ソフトR(渡部)およびSPSS(澁谷・吉村)を用いて行い、両者の結果を比較検討する。日本心理学会、日本行動計量学会などで発表を行い、他の研究者からのフィードバックを参考にして最終的なモデルの構築にあたる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
秋田・青森・奈良における高齢者各1000名対象のネットワーク調査のために、調査票印刷費15万円、事前連絡用往復はがき40万円、調査票郵送費70万円、調査サポート学生謝金15万円、調査に伴う文具代10万円など、計150万円を予定している。その他に、ソーシャルネットワークのマルチレベルモデル作成のためのソフトを走らせるワークステーション3台計60万円を予定している。前年度からの繰り越しは予備費に充てる。
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