2013 Fiscal Year Research-status Report
社会情動的選択性から見た高齢者のソーシャルネットワークに関する研究
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24530788
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
渡部 諭 秋田県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40240486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 泰秀 青森大学, 社会学部, 教授 (40226189)
吉村 治正 奈良大学, 社会学部, 准教授 (60326626)
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Keywords | 社会情動的選択性 / 高齢者 / ソーシャルネットワーク |
Research Abstract |
昨年度10~11月に行った予備調査に引き続き、今年度は本調査を実施した。本調査の対象を高齢者のエゴセントリックネットワーク(パーソナルネットワーク)とし、高齢者を中心とする人間関係の分析に焦点を当てることに決定した。次に、本調査用の調査票の作成に着手した。ego(=調査対象高齢者)のデモグラフィック項目の他に、egoに関する自己効力と未来展望、alter(=調査対象高齢者と関係のある者)のデモグラフィック項目、network configurationと社会情動的選択性理論との関係に関する項目を作成し(試作)調査票に含めた。本調査を実施する前に、数人の高齢者に対して試作調査票への記入を求め、項目の改良を行い、最終版調査票(22ページ、85項目)の作成を行った。 本調査は平成26年2~3月に青森市で行われ、研究代表者と研究分担者の監督のもと、現地のコーディネータが調査票の配布や回収、調査のサポートなどを行った。調査は現地のコミュニティセンターに高齢者を呼び、グループごとに調査票の記入を求めた。調査票記入中に、コーディネータが高齢者のサポートを行ったり質問に答えたりした。回収調査票数は276である。 調査票データの入力が終了し、分析を開始するところである。分析は、最初の予定通りマルチレベル分析を行う他に、exponential random graph model分析も行う予定である。マルチレベル分析によって、高齢者のソーシャルネットワークに関する社会情動的選択性からの予想の検証を行い、さらにexponential random graph model分析によって、高齢者がネットワークを形成する理由がどこにあるかが明らかにできる。 平成26年4月にジョージア州アトランタで開催されるCognitive Aging Conference 2014で途中結果を発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査票の作成、本調査の実施、データ分析法の検討は既に終了している。回収調査票数も276という予想を上回る数を確保することができた。 ただし、2つだけ改良の余地を残した点が見出された。高齢者のネットワークを調査するために、高齢者に対して現在付き合いのある人たちの記入を求めた際に、かなり回答に苦労する状況が見られたことである。高齢者の大多数が、名前(や呼び名)を挙げた人数は5・6人にとどまり、予想外に回答に苦労する現状が明らかになった。もう1点は、高齢者が名前(や呼び名)を挙げた何人かの人についての属性を問う項目に回答を求める際に、回答の混乱が見られたことである。つまり、名前(や呼び名)を挙げた人の誰について今回答しているのか、途中で混乱する状況が見られた。以上の2点については、将来高齢者のネットワーク調査を行う機会があれば検討したいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
本調査の分析を急ぎ、分析結果の発表を行う。まず、既述したように平成26年4月にジョージア州アトランタで開催されるCognitive Aging Conference 2014で途中結果を発表する予定である。続いて、9月に仙台で開催される日本行動計量学会で発表、また11月に新潟で開催のAsian Network for Public Opinion Research (ANPOR)で発表を行うことを考えている。 分析結果の発表と並行して、高齢者のネットワーク調査テクニックの向上にも努めたい。高齢者に対してネットワークの回答を求めることは予想以上に負担を強いることが明らかになったので、より負担の少ない効率的な問を研究したいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時に記載したアメリカ心理学会データベース加入料金については、他の研究費で加入した。また、本調査を郵送調査ではなく、すべて集団調査によって行ったため、事前連絡用はがき代と調査票郵送費が不要になった。さらに、調査票印刷の外部発注を止め自分たちで印刷機による印刷に切り替えたため印刷代が不要になった。 次年度使用額が約70万円あるが、ちょうど平成26年10月に「第1回三か国(中国・韓国・日本)心理学シンポジウム」が北京で開催されるので、本調査の分析結果について発表を行うための旅費に支出する予定である。
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