2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530793
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
小林 春美 東京電機大学, 理工学部, 教授 (60333530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 恵子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (80326991)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 指示意図理解 / 語用論的解釈 / コミュニケーション / 言語発達 / 非言語行動 / 障害児支援 |
Research Abstract |
本年度では、視線と指さしの非言語情報の統合的利用と養育者の教示時の指示行動を検討、及び発達障害児を持つ養育者のカウンセリング・支援を行った。 1. 非言語情報が統合される際に定型発達児が、どのような視線行動を行っているのかを、部分名称獲得場面を用いてビデオ映像から調べた。実験は、Kobayashi(2007)の手法を利用し、実験者の視線方向を操作した条件を設け、実験を行った。実験者が参加者に視線を向けながら事物の部分を教示した場合、参加者は、教示時に教示された部分に視線を向けていたとしても「実験者が教示した部分」と解釈しないことがわかった。 2. 養育者の教示時の指示行動について、Kobayashi and Yasuda (2009)の分析手順に基づいて、ビデオ映像より分析を行った。養育者の教示行動について調べたところ、事物の全体を教えているときは、教示時にショウイング行動のような事物をよく見せている一方、事物の部分を教えているときは、教示時に指さしのような部分に対し注意が行きやすい指示動作をよく行っていた。養育者は、相手の注意方向を推測し部分名称を教えている可能性があることがわかった。 3. 発達障害児を持つ養育者のカウンセリング・支援を行った。カウンセリングに対しては、支援活動が日常生活に般化しない問題点について、2)の知見を養育者に提示すると共に日常生活における問題点について検討した。支援に関しては、他者の動作や表情からその意図を読み取るようなゲームを取り入れたグループ活動を実施した。また、自由遊び場面での自閉症児たちの行動を観察し、言語情報と非言語情報から、かれらが他者意図をどのように推測しているかということを検討した。その結果、自閉症児は非言語情報より言語情報に主に注意を払い他者意図を推測していることがうかがえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視線と指さしの非言語情報の統合的利用と養育者の教示時の指示行動を検討、及び発達障害児を持つ養育者のカウンセリング・支援に関しての研究進捗はおおむね順調に進展している。 1に関して、事物提示時の実験者の視線が語意推測に果たす役割が大きいことがわかった。2歳児においても、相手の注意方向を推測して意図推測を行うという知見は、研究当初に予測されていた結果よりも新規性が高い知見である。 2に関して、養育者は、指示対象の教示の違いをジェスチャーだけではなく、相手の注意方向に反映し教えていることがわかった。養育者が教えるときに相手の注意方向を考慮している可能性についての研究はあまりなく、この知見は、他者意図推測と注意方向の関係を明らかにする上で重要な知見である。また、この知見をCognitive Science Societyが主宰している国際会議CogSci 2012でFull Paperのポスター発表を行った。 3の養育者カウンセリングについて、発達障害児を育てる養育者は、子どもの学習や学校生活等、その子ども自身の問題に取り組むことを重視しており、どのように般化させるかという意識が少ないことがわかった。支援について、カウンセリングから挙げられた問題点を基に、他者の動作や表情からその意図を読み取るようなゲームを取り入れたグループ活動を実施した。また、自由遊び場面での自閉症児たちの行動を観察し、言語情報と非言語情報から、かれらが他者意図をどのように推測しているかということを検討した。このことから自閉症児は非言語情報より言語情報に主に注意を払い他者意図を推測している可能性を示した。この知見は、障害児支援を行う上で基盤的な知見であると考えられる。 以上のことから、平成24年度の研究実施計画の達成度は高く、おおむね達成したといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書の研究計画に基づき実施を行う。 具体的には 1.意図理解能力と非言語情報との関わり(小林): 平成24年度で得た視線の知見に基づき、指示動作に条件を設ける。指示動作の条件では、事物の範囲をなぞるような指さしや、事物に接触しない指さしなど、様々な指さしを行う。また、視線方向や視線を送るタイミンク等も検討する。 2.養育者の非言語的情報産出と意図理解能力(小林、伊藤): 平成24年度で得た知見に基づき、発達障害児を持つ養育者の指示行動について分析を行う。指示動作の条件では、事物の範囲をなぞる様な指さしや、事物に接触しない指さしなど、様々な指さしを行う。また、視線方向や視線を送るタイミング等も検討する。また、非言語的でありながら、言語情報を有している発話の間(ま)について定型発達児を持つ養育者を対象に分析を行い、コミュニケーションとの関連性を調べる。 3.養育者の日常的行為の定量的評価とカウンセリング・支援(伊藤、小林): 平成24年度で得た知見に基づき、養育者の行為を検討し、実際に行為の支援を行う。また、問題行動と養育者への支援についても検討を行い、日常場面における行動を評価するために、再度ビデオデータを収集、分析する。 4.次の学術雑誌へ投稿準備・投稿を行う。Cognition、Developmental Science、 言語聴覚研究、コミュニケーション障害学。学会発表は次の各学会で研究発表を行う。Cognitive Science Society、Japanese Society for Language Sciences、 Robot-Human Interactive Communication、日本発達心理学会、日本認知科学会、日本特殊教育学会、日本心理臨床学会、日本コミュニケーション障害学会。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成金が生じた状況は、デジタルビデオ等の物品購入資金を他の予算で行えたことによるものである。翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画に関して、繰り越した助成金は、分析補助者の謝金に充てることを考えている。この謝金に充てることで、分析を行う範囲を動作・視線分析だけではなく、発話分析にも向けられる可能性があり、養育者の行為に関して一層の知見が得られることを期待している。
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Research Products
(21 results)