2013 Fiscal Year Research-status Report
説明行為が説明事象の信憑性・実在性認知に与える心理的影響過程
Project/Area Number |
24530795
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
宮本 聡介 明治学院大学, 心理学部, 教授 (60292504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太幡 直也 常磐大学, 人間科学部, 助教 (00553786)
菅 さやか 愛知学院大学, 教養部, 講師 (30584403)
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Keywords | 後説明効果 / 説明の上手さ / 実在性認知 / パーソナリティ認知 / 自己生成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、説明という行為が説明行為者自身に与える心理的影響(以下これをPost Explanation Effect: PEx効果と表す)を明らかにすることである。 平成24年度に実施した実験では、架空の心理用語を説明する際の説明の上手さが、実在性認知と正の相関を示すことが示された。そこで平成25年度の実験1では架空の説明対象を説明する際に、説明内容を自己生成させない場合にPEx効果が生じるのかどうかが検討された。本実験では、架空のスポーツルールを実験参加者に説明させた。ただし、あらかじめ用意された説明文を音読させたため、説明を自己生成させていない。説明後に説明の上手さと架空のスポーツに対する実在性評定をさせたところ、説明の上手さと実在性認知との間に有意な相関が認められなかった。このことから、昨年度実証された実在生認知と説明の上手さとの相関には、説明を自己生成する必要があると言える。 また、実験2ではPEx効果の普遍性を探るべく、架空の心理用語とは異なる別の説明対象を用いて実験を行った。まず、実験2-1では、栄養飲料の試飲後、栄養ドリンクにどのような効能があるかを第3者に説明させるか否かを操作した。その後栄養ドリンクの効能について評価を求めたが、PEx効果は認められなかった。実験2-2では、実験参加者に社会志向性・個人志向性PN尺度への回答を求めた後、自己の社会志向性・個人志向性のいずれかに該当する過去のエピソードを想起させ(個人志向群・社会志向群)、そのエピソードが当該志向性とどのように関連しているのかを他者に向かって説明させるか自己への説明にとどめるか(他者説明群・自己説明群)を操作した。実験の結果、社会志向群においてPEx効果が確認され、自己のパーソナリティ認知に他者への説明の影響があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体的な目的は1)PEx効果の生起条件を実証的に明らかにすること、2)PEx効果に介在する心理的媒介変数を明らかにし、PEx効果を俯瞰的に説明できるモデルを構築することである。 昨年度の文献的研究から、PEx効果の生起条件には、経験、相互作用、共有リアリティの3段階のレベルがあることが示唆されている。平成24年度の3つの実験から、説明内容を伝える受け手がいなくても、説明行為を経験するだけで実在性認知が高まるというPEx効果がある程度示唆された。また説明を行う際に、その説明内容が自己生成されていることがPEx効果に結びつくことが平成25年度の実験1によって明らかにされた。これらの結果は、PEx効果生起条件の3段階モデルのうちの”経験”のレベルで、効果が確認されたことになる。また平成25年度の実験2-2からは、自己に向けた説明にとどまるよりも、他者に向けた説明によってPEx効果が生起することが示唆された。これは"相互作用"のレベルでの効果生起が確認されたことになる。 この2年間の間に、説明という行為が、説明行為者自身に及ぼす影響の3段階モデルを構築し、”経験”のレベルでの実証研究にある程度成功し、また”相互作用”のレベルでの効果生起も確認できる段階となったことから、当初の研究の進捗予定を概ね順調にクリアしていると言える。一方、効果の生起理由となる認知的な変数の検証がやや遅れており、この点については、平成26年度に検証が実施されることが期待される。 なお、平成24年度に実施した架空の心理用語に関連した一連の実証研究の成果を論文にまとめ学術雑誌に投稿する予定であり、この点も本研究の成果が概ね順調に進んでいると評価できる根拠となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度が本研究計画の最終年となる。平成26年度には、以下4点の実施を予定している。 第1に、PEx効果3段階モデルの"相互作用"のレベルでの追試実験を実施し、相互作用レベルでのPEx効果生起の強さを検証する。さらに、”共有リアリティ”のレベルでの実験を計画する。共有リアリティとは、受け手が説明者の説明内容に合意し、説明者-被説明者間で説明内容を共有出来たと感じることである。実験方法としては、受け手との対面場面で実験参加者に説明をさせ、最後に受け手が説明内容を理解できたかどうかを説明行為者にフィードバックする形(理解できた・理解できなかった)で、共有リアリティを操作し、その後、PEx効果の影響を測定する。 第2に、これまでの本研究の成果を学会・研究会等で広く公表し、第3者視点から、本研究に対する評価を得る予定である。現段階では、7月に開催される日本社会心理学会、9月に開催される日本グループダイナミックス学会で発表を予定している。また、上記実験の成果が固まったところで、都心で開催されいている社会心理学関連の研究会等で本研究の成果を報告する予定である。また、可能であれば毎年1月下旬から2月に開催されるアメリカ社会心理学会(SPSP)にも参加し、本研究の成果を公表したいと考えている。ただし、研究代表者の本務校では、この時期に入試があるため、出張可能かどうかは、今後関係各所と連携をとり準備を進めてゆく。 第3に、本研究の実証研究の部分をいくつかのパーツにまとめて学術雑誌に投稿する。特に平成24年度に実施した架空の心理用語に関する一連の実証研究は、学術雑誌への投稿準備を進めており、今後、投稿、審査へと進めてゆく予定である。 第4に、本研究プロジェクトが科研費の最終年度であることから、その成果を報告書にまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度において未使用残額が495090円発生している。内訳は研究代表者11847円、分担研究者計483243円の助成金未使用分である。分担研究者2名の助成金未使用金について、菅氏は当該年度4月より、新しい職場環境で教育研究活動を始めたこともあり、本研究プロジェクトに十分に時間を割くことが出来なかったことが予想される。また太幡氏の当該年度の助成金は10万円、支出した経費は102511円となっている。助成額を超えた支出は、昨年度の残金によりカバーされており、当該年度についてはほぼ助成金額通りの支出がされていると言える。 宮本については、次年度使用額は小額であるため、引き続き研究計画に則って進めてゆく。未使用金が発生した分担研究者についても、次年度予定されている実験の実施にかかる費用、学会等への参加に必要な交通費、宿泊費等で消化されてしまう金額であり、特に特別な対策を要するものではないと考える。次年度も2名の分担研究者と密に連絡を取り合いながら、本研究プロジェクト完遂に向けて、助成金を適正に消化し、研究を進めてゆく。
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Research Products
(2 results)