2015 Fiscal Year Annual Research Report
逸脱的消費者行動における実証的研究:特に溜め込み行為の心理的メカニズムに注目して
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24530801
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
池内 裕美 関西大学, 社会学部, 教授 (50368198)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ホーディング / 逸脱的消費者行動 / 溜め込み / ゴミ屋敷 / 死蔵 / アニミズム / 喪失 / 国際間比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は、個人や社会に否定的結果をもたらす「逸脱的消費者行動」の中でも、特に溜め込み行為(ホーディング:モノを溜め込み、処分できない行為)に焦点を当て、溜め込みに至る心理的メカニズムの解明や、結果として生じる心理的・社会的諸問題など、多面的な検討を試みることにあった。本年度(平成27年度)は実施計画に基づき、発展的研究として「ホーディング傾向に関する国際間比較調査」と「ホーディングと喪失体験との関連性」について検討を試みた。 まず国際間比較調査においては、日本人のアニミズム的思考の強さを確認し、次いでアニミズムがホーディング傾向に及ぼす影響について日米間で比較した。分析の結果、日本人は米国人に比べアニミズム的思考は強いが、日米ともにアニミズム的思考が強いほどホーディング傾向も強いことが見出された。さらにその関係性は、特に米国において顕著であり、また日本人は溜め込んでいるモノへの愛着や重要性が低いといった結果が示されたことから、アニミズム的精神ゆえにモノを大切にするという、これまで伝統的に捉えられてきた日本人像に一石を投じることとなった。 「ホーディングと喪失体験との関連性」に関しては、日常的なホーディングの約2割程度が何らかの喪失体験によってもたらされ、そのうち約4分の1が精神的な喪失や死別がきっかけとなることが見出された。また、ホーディングの生起率自体に性差は認められなかったものの、男性の方が喪失体験に起因する割合が有意に高かった。つまり、男性はソーシャル・サポートが乏しく、社会的・感情的に孤立しやすいため、喪失による不安感や孤独感をモノで埋めようとする傾向が示唆されたといえる。今後は、喪失の究極的な形である「自分自身の死」を取り上げ、存在脅威管理理論の観点から喪失とホーディングの関係性を検討したい。
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Research Products
(20 results)