2012 Fiscal Year Research-status Report
教員を目指す大学生の学習支援を目的としたメタ認知能力の育成
Project/Area Number |
24530806
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
懸田 孝一 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70281764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅村 亮彦 北海学園大学, 経営学部, 教授 (70301968)
吉野 巌 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60312328)
宮崎 拓弥 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00372277)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メタ認知 / メタ認知尺度 / 批判的読み |
Research Abstract |
平成24年度の研究目的「メタ認知能力尺度の開発」のために、メタ認知尺度(吉野・懸田・宮崎・浅村, 2008)の妥当性を検討する2つの研究を行った。 研究1:メタ認知尺度と認知課題との関係性の検討:メタ認知尺度得点とメタ認知活動の働きが必要と考えられる課題成績との関係からメタ認知尺度の基準関連妥当性を検討した。大学生に、メタ認知質問紙と複数の課題を実施した。その結果、メタ認知尺度得点と、メタ認知の働きが必要となると考えられる計算の正誤を確認する「計算チェック課題」やある機器の操作を知らない人にその機器の操作方法を説明する「機器操作説明課題」の成績との間に有意な正の相関が認められたが、メタ認知の働きが必ずしも必要とは考えられない「ストループ課題」の成績とは相関が認められなかった。 研究2:文章読解に対する読みの目標とメタ認知能力の影響:文章読解時の読みの目標によってメタ認知活動がどのような影響を受けるのか、そして、読みの目標とメタ認知能力との関連を検討した。その結果、批判的読みのような、より高度な読みの目標を設定するとメタ認知能力が関与し、メタ認知能力が高い人はより一層、メタ認知活動が活発になることが明らかとなった。 また、批判的読みという目標設定はメタ認知活動を活発に促すが、それはメタ認知能力の高い人にとってより効果的な目標であることも示唆された。批判的読みは一般的に推奨される傾向にあり、メタ認知能力の育成に効果的な読み方となる可能性がある。しかしながら、その効果にはかなり個人差があり、メタ認知能力に応じて適切な課題を設定する必要があると考えられる。 本研究で妥当性が確認できたメタ認知尺度は非常に簡便に実施できるため、より汎用性の高いツールを提供できたと考える。また、一般的に推奨される傾向にある批判的読みの効果も限定的であることが示唆されたことは重要な成果であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的である「メタ認知尺度の開発」は、「研究実績の概要」の研究1および研究2で述べたように、我々が開発したメタ認知尺度が、メタ認知の働きが必要と考えられる課題成績と関連があり、その妥当性が確認できたことから、概ね達成できたと考える。 また、研究2では、批判的読みがメタ認知能力の育成に効果的な課題となりうるが、同時にその効果には個人差があるという知見も得た。この成果は、平成25年度の研究目的である「メタ認知能力の育成に効果的な課題の特定」についての検討結果と見なすことができ、部分的にではあるが平成25年度の研究目的に関する成果を得ることができたと考える。同時に今後の研究の課題も併せて指摘することができた。こうした状況を考えると、現在までの達成度は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の研究目的は、「メタ認知の育成に効果的な課題を特定する」と「特定した課題を利用した支援手法を開発し、その効果を検証する」の2つとなる。1つめの目的については平成25年度の研究実施計画にしたがって検討する。具体的には、メタ認知能力と課題発見力および批判的思考力の関係を検討し、メタ認知能力支援に利用する効果的な課題の特定を試みる。ただし、平成25年度は当初の研究実施計画を一部変更する。その理由は平成24年度の研究成果を踏まえると、当初予定していた課題を一部見直す必要があると考えられたためである。 2つ目の目的については平成26年度および平成27年度の研究実施計画にしたがって検討する予定である。具体的には、教員に求められる資質の学習活動に対してメタ認知育成が与える効果を検証する。メタ認知を育成するため、メタ認知的活動の頻度を高める課題を遂行させ、それが実際の授業での学習活動に活用できるよう促した上で、課題遂行及び指導の実施前に比べて実施後に、教員を目指す大学生に求められる資質能力の学習効果が高まるかどうかを検証する実験を行なう。 以上、研究実施計画の小さな変更は一部あるものの、平成25年度以降も概ね、当初設定した研究目的および研究実施計画にしたがって研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度も当初の計画で研究費の使用を考えている。次年度使用額として663,826円があるが、これは平成24年度の研究遂行において、購入を予定していた物品費、データ処理などにかかる人件費、旅費が当初の予定よりも少額となったことが主な理由である。 平成25年度は、当初の使用計画に加えて、統計パッケージの購入や人件費での増額が考えられる。この理由としては、平成24年度の実験等で得られたデータの分析に新たに統計パッケージが必要になることが予想されていること、より大量のデータ処理が必要となることが予想されていることがある。このように当初想定していた以外の物品の購入なども併せて考えた使用計画とする。
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Research Products
(3 results)