2012 Fiscal Year Research-status Report
危機における子どもや教師の被援助志向性やチーム援助がレジリエンスに与える影響
Project/Area Number |
24530808
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石隈 利紀 筑波大学, 人間系, 教授 (50232278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家近 早苗 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (40439005)
田村 節子 東京成徳大学, 応用心理学部, 教授 (40549151)
瀧野 揚三 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 教授 (60206919)
大野 精一 日本教育大学院大学, 教授 (60434445)
西山 久子 福岡教育大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (80461250)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レジリエンス / 危機 / チーム援助 / 被援助志向性 / 子ども |
Research Abstract |
平成24年6月、宮城県仙台市の小学校・中学校・高校の教師(管理職含む)に対して、「震災後の子どもの状況」「震災後の子どもの問題への対応」「震災後子どもががんばっていること」について、聞き取りまたは自由記述で、調査を行った。教師は、震災後の子どもの問題として「不登校」「非行」などの問題、「PTSDなどに関する心のケア」の課題、多様なニーズに応じる学級経営の課題をあげた。それに対して校内支援体制で取り組んでいるが、学校によってはチーム支援に苦戦しているところもあった。 また平成24年9月10月中心に実施した、福島県の小学生・中学生155,763名に対する心身の健康調査の一環として、中京大学辻井正次氏らと協力して、「あなたが大震災以降、普通の生活に戻るために、工夫して取り組んだことは何ですか」(問1)「震災前にはなかなか出来なかったけれど、あなたが震災以降、できるようになったことは何ですか」(問2)について自由記述で訪ねた。その主な結果として、工夫したこととして「節電、節水」など震災直後の生活が示された。また小学生低学年では「算数、漢字、習い事」など勉強など学校生活に関することが、子どもの工夫や頑張りであった。一方中学生では、「家族、友達、節水、人助け」などさまざまテーマが「大切」なこととして、子どものなかで位置づけられた。震災後の、子どもの学習生活や人間関係を大切にすることが、子どもの安心感や自己コントロール感を高め、レジリエンスの維持向上につながっていることが示唆された。 さらに共同研究者西山久子、大野精一が、それぞれヨーロッパ、香港の会議に出席し、危機支援について情報収集を行った。西山はBasic PHという危機支援モデルの、被災者の問題の捉え方に焦点をあてることについて情報収集を行い、平成25年度以降の子どもや教師のレジリエンスの研究に示唆を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、宮城県仙台市の教員(管理職含む)の聞き取りや自由記述から、震災の子どもの多様なニーズに応じる校内支援体制(チーム支援)の実情や課題について示唆を得た。具体的に、被災地の教員とともに問題解決に向けた研修会や話し合いを通して、聞き取りなどを行い、子どもへの支援の課題の中心が「子どもの多様な援助ニーズへの対応」であることがわかり、今後の調査の焦点が明確化された。 また福島県の小学生・中学生の自由記述から、子どもは震災後、「節電」「節水」などの生活、「勉強・習い事」などの学校生活、そして「友達関係」などでの、工夫を通して、安心感や自己コントロール感を高め、レジリエンスを維持向上させていることがわかった。これはこれまでの研究成果と一致するとともに、今回の大震災においても「学校生活」を含む生活での工夫や、それを通した成長が、子どもの回復につながることが確認され、平成25年に予定している子どもの「レジリエンス」や「被援助志向性」に関する評価リスト作成にヒントを与えるものである。 子どものレジリエンス、援助ニーズ、および学校の支援体制に関する平成24年度の調査は、平成25年度以降の調査質問紙の準備ができたことが評価できる。さらに宮城県仙台市および福島県の教育委員会や学校とネットワークが作成できたことが、今後の現場の問題解決を行いながらの調査の基盤となることも、平成24年度の成果と言える。ただし、福島県の子どもの自由記述についての分析がキーワードの分析であり、修正版グラウンデッドアプローチを用いた分析がまだできていない。この課題は、平成25年に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、まず福島県の小学生・中学生の調査結果(自由記述)について、さらなる分析を行う。そして先行研究、欧米等の資料および平成24年度の仙台市の教師に対する調査、福島県の小学生・中学生に対する調査の結果をもとに、①子どもと教員の「被援助志向性」の評価リスト、および「被援助志向性」に関係する要因のチェック項目の作成、②「危機におけるチーム援助」の評価リスト、および関連する要因のチェック項目の作成、③子ども・教師・学校の「レジリエンス」の評価リスト、および関連する要因のチェックリスト項目を作成し、質問紙による調査を実施する。調査においては、宮城県、福島県、茨城県において、小学校・中学校10校、高校は各3校(計39校)を対象とする予定である。 この調査を通して以下のことの目的を達成する。①危機状況における子どもの被援助志向性とレジリエンスについて、またその関係について明らかにする。②教師の被援助志向性や学校のチーム援助が教師や学校のレジリエンスに与える影響について明らかにする。 研究成果は、国内外の関連学会に発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成24年度からの繰越10万円と予定の100万円で、計110万円の研究費となる。そのうちデータ分析等にかかわる人件費・謝金で40万、質問紙等の印刷・郵送費で30万、情報交換や研究発表にかかわる旅費等で40万円の予定である。
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