2012 Fiscal Year Research-status Report
発達障害幼児のための神経心理学的検査及び支援プログラムの効果の検討
Project/Area Number |
24530809
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小林 久男 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50004122)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経心理学的検査 |
Research Abstract |
本研究は、発達障害幼児を対象とした神経心理学的検査を作成し、その有効性を検討することが主な目的である。平成24年度は、①注意、②同時処理・継次処理、③プランニングの3種類の検査について、文献や既成の発達検査、幼児の行動観察などを参考に検査項目を作成し、健常幼児において検討することが目的であった。これまでの成果として、①注意検査に関しては、視覚性持続的注意検査(パソコンソフト『もぐらーず』による検査)と聴覚性持続的注意検査(『おはなし』の聞き取り検査)からなる持続的注意検査および受容性選択的注意検査(異同弁別検査)と表出性選択的注意検査(動物の絵を用いたストループ検査)からなる選択的注意検査を作成した。②同時処理・継次処理検査に関しては、3種類の同時処理検査(積み木の組み立てを用いた空間関係検査、言語の聞き取りと操作からなる言語検査、類推検査)と4種類の継次処理検査(数唱、文の復唱、順番の理解、手の動作の切り換え)を作成した。③プランニング検査に関しては、カード分類課題とハノイの塔課題からなる非言語性プランニング検査および絵とまんがを用いた言語性プランニング検査の2種類の検査を作成した。①注意、②同時処理・継次処理、③プランニングの3種類の検査のうち、注意検査については、4歳児(9名)、5歳児(11名)、6歳児(10名)を対象に年齢による変化を検討した。年齢毎にそれぞれの検査の正答数と所要時間を求め、年齢的変化を検討したところ、正答数は年齢とともに増加し、所要時間は減少したことから、本注意検査の有効性が確認された。また、ストループ検査に関して、大学生33名を対象に、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて検討したところ、文字から色への切り換えに伴い前頭前野において脳血流の有意な増加が認められたことから、ストループ検査と前頭前野の活動との関連性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度においては、①注意、②同時処理・継次処理、③プランニングの3種類の検査の作成とそれらの健常幼児での検討が主な目的であった。これらのうち、ほぼ達成できたのは①であり、②と③については、検査項目の作成はほぼ終了しているが、それらを健常幼児に実施し、各検査の年齢的変化を検討するという課題が未達成の状況にある。この原因は、②と③の検査項目の作成にかなりの時間がかかったためである。本研究のような、幼児を対象とした包括的な神経心理学的検査は内外を通じて類似のものはなく、一つ一つの検査項目が幼児において妥当かどうかを慎重に検討する必要があった。このため、既成の知能検査や発達検査の検査項目、さらには幼児の行動観察を参考にしながら、本検査の各検査項目を検討したが、まだ十分であるとは言い難く、さらに精査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
①注意、②同時処理・継次処理、③プランニングの3種類の検査の各下位検査項目について、それらが幼児において妥当かどうかをさらに慎重に検討する必要がある。そのためには、健常幼児の行動発達の様子を撮影したビデオの分析と、注意欠陥多動性障害や自閉症、学習障害と診断された学童の保護者の協力を得て、幼児期の行動の様子を撮影したビデオの分析を行い、両者の幼児期における行動の差異を明らかにし、そこから検査項目を検討していく必要がある。そのためのビデオカメラ、レコーダー、パソコンなどの機器の他に研究協力謝金が必要である。また、検査項目の検討にあたっては、本研究で作成しようとする検査項目と比較的近い日本版K-ABCII(平成25年の夏に発売予定)や新版K式発達検査などの検査を参考にする必要があり、これらの検査道具とともに検査の作成には市販の教材・教具も必要である。さらに、①注意、②同時処理・継次処理、③プランニングの3種類の検査を健常幼児と発達障害幼児に対して行う上で検査の実施とデータ処理のための協力者が必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、①健常幼児および注意欠陥多動性障害や自閉症、学習障害と診断された学童の幼児期の行動発達の様子のビデオ分析とその処理に必要なビデオカメラ、DVDレコーダー、パソコンなどの機器の購入の費用と研究協力謝金、②本研究の検査項目の作成のための日本版K-ABCIIや新版K式発達検査などの検査道具および教材・教具の購入の費用、③注意、同時処理・継次処理、プランニングの3種類の検査を健常幼児と発達障害幼児に実施するとともにそれらのデータを処理するための実験協力謝金、④関連する学会や研究会において関連研究分野の研究者との意見交換や情報収集、研究成果の発表を行うための旅費が必要である。
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