2012 Fiscal Year Research-status Report
現代青年の友人関係における心理的脆弱性と社会適応の関連に関する研究
Project/Area Number |
24530811
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡田 努 金沢大学, 人間科学系, 教授 (10233339)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パーソナリティ / 青年期 / ふれ合い恐怖 / 友人関係 |
Research Abstract |
本研究は,基盤研究(C)課題番号20530589「現代青年の友人関係・自己のありかたと社会適応に関する研究」を基課題として平成24年度科研費最終年度前年度応募採択課題として継続的に実施されている一連の研究である。本研究では,現在までに「ふれあい恐怖的心性」尺度の妥当性を再検討する作業および,関連する自己の脆弱性に関する変数に関する尺度開発と,それらの関連性に関する検討が進められている。この検証のために,大学生に対する質問紙調査を継続的に実施した。 1.これまで得られたデータを分析し研究成果の発表を行った。(1)日本社会心理学会大会において「ランチメイト症候群」に関する尺度の作成に関する報告を行った。(2)日本教育心理学会総会において「ふれ合い恐怖的心性」尺度の構造に関する中間的な結果発表が行われた。 平成24年度は,「ふれ合い恐怖的心性」尺度の妥当性検討のため,より精度の高いデータを得ることを目的として,大学1年生に対して質問紙調査を行い,これまでのデータと合わせて分析を行った。調査項目は以下の通りである。 1)ふれ合い恐怖的心性尺度:岡田(2002) 2)ふれ合い恐怖に関する尺度:福井(2007)岡田の尺度の併存的妥当性の確認のために用いた。3)傷つけ合い尺度: 岡田(2012) の一部4) 軽躁的関係:岡田(2005)5)評価過敏性-誇大性自己愛尺度:中山・中谷(2006) いずれも,全くあてはまらない(1点)~とてもあてはまる(5点)の5件法とした。現在これらのデータに基づいて,解析を実施しており,その結果に基づいて次の研究計画を策定することを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では「ふれ合い恐怖的心性」の構造について再検討を中心とした研究を実施するとし,ふれ合い恐怖的心性尺度に新たな項目を加え,場面不安尺度との関連を検討することが想定されていた。しかし,新たな尺度を加える以前に,原尺度の妥当性そのものをまず先行して検討することが望ましいと考えられるため,類似した概念を測定する尺度との併存的妥当性を測るとともに,他の変数との関連を検討した。その結果,「ふれ合い恐怖的心性」の各下位尺度は原尺度においても,十分な併存的妥当性が認められることが明らかとなり,新たな項目を加えない状態でも利用可能であることが見出された。 また,ふれ合い恐怖的心性を構成する下位概念の内,「不安感」を測る「関係調整不全」から,より行動的な側面を測る「対人退却」へのモデルを構成し,自己愛の下位構造との関係についてモデルを策定された。その結果,1.自己愛とふれ合い恐怖の関連においては,過敏性自己愛が関係調整不全に,誇大性が対人退却にそれぞれ関わること,2.ふれ合い恐怖の「関係調整不全」に対する防衛として,他者との関係から退き(対人退却)相手の距離を取ることで安定しようとする方向と,関係を維持することにより,傷つけられる恐れが生じそれを回避するために,傷つけることを回避する中で,円滑な関係を維持しようとする,という2方向が示された。これらの結果により,当初計画で問題提起されていた各変数の関連について,適合度の高いモデルが検証され,「ふれ合い恐怖的心性」の尺度的安定性と構造を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針は以下の通りである。 1)平成24年度までに得られたデータに基づいて「ふれ合い恐怖的心性」尺度の妥当性についての検証結果と他の変数との関連について分析と結果のとりまとめを進める。2)さらに同尺度について新たな項目作成追加の必要性の有無について検討する。3)ふれ合い恐怖的心性と具体的な「不安場面」との関係を検討するため,岡田(2002)において作成された「不安項目」を尺度化することを試みる。4)すでに実施されているランチメイト症候群尺度について,特に希少例に反応する項目についての取り扱いを含め,尺度の整備を進める。以上に基づいて尺度項目を確定した上で5)当初の計画にあった本調査1(首都圏および石川近郊における調査)および本調査2(より広範囲での調査)を実施する。 なお,これに加え,ランチメイト症候群傾向の他にも青年の社会適応に関する変数を必要に応じて追加することを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)調査の実施に関わる諸経費 「今後の研究の推進方策」に記した1)~4)を実施するための調査関連経費として,調査用紙の作成に関わる諸経費,調査用紙作成および実施のための補助者の謝金等 2)研究発表および学会参加に関わる旅費 主に北海道,沖縄県および首都圏等で開催される複数学会の参加を予定している。 3)調査結果の集計および分析,発表および今後の計画策定に関わる経費 データ入力経費,データ整理補助のための謝金,および関連する消耗品等の経費等 4)その他研究の遂行のために必要な経費 を中心として予算を執行していく予定である。とくに「次年度使用額」に関しては次のような経緯から額が発生している。すなわち,平成24年度においては,原尺度の妥当性の検討を先行して行うこととなったこと,また平成25年度以降において遠隔地での学会開催が相次いでが予定され,その場において本研究に関する有用な知見を得ることが期待できることなどから,平成25年度においてより大きな予算の必要性が予想されることとなった。また新たな質問紙項目を作成し調査を実施することが計画されているため,調査に関わる経費についても平成24年度に比べ必要額が大きくなることが予想された。よって平成25年度においては上記「1)調査の実施に関わる諸経費」および2)「研究発表および学会参加に関わる旅費」について大きめの予算執行を想定した計画となっている。
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Research Products
(2 results)