2012 Fiscal Year Research-status Report
健常高齢者の連合記憶の成績向上を促す諸要因の分析と介入的支援の効果の検討
Project/Area Number |
24530812
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松川 順子 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20124787)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 健常高齢者 / 連合記憶 |
Research Abstract |
24年度には,夏に第一期実験,2013年2・3月に第二期として,いずれも65歳~75歳の健常前期高齢者に参加してもらって実験を行った。第一期実験では,種類の異なる複数の属性情報の連合記憶の向上に影響を与える諸要因を検討するために,単語対(言語)記憶と場所・対象物(視覚)記憶による実験を実施した。また,高齢者の持つ記憶への信念や自己効力感など,また生活全般への意欲やウェルビーイング感情,身体的健康などを質問紙法により調査した。単語対連合記憶実験では,手がかり再生,再認(新旧法)成績はいずれも低かった。視覚記憶実験は種類と共に短期的な記憶を扱った。その結果,場所記憶のエラーは少なく,対象物単独と連合記憶で同程度のエラーが発生し,連合記憶の顕著なエラーは見られなかった。 第二期では単語対連合記憶実験を,新たに手続きを修正して実施し,同時に符号化方略を呈示することで,その利用と効果を検討した。また引き続き,高齢者の持つ記憶への信念や自己効力感など,また生活全般への意欲やウェルビーイング感情,身体的健康などを質問紙法により調査した。その結果,統制群・実験群とも再生・再認成績がかなり向上し,記憶するべき事態の量が想起に影響を与えることが明らかになった。逆に,統制群の成績が予想よりも上昇したため,方略の付与の効果は今回の実験では明らかにならなかった。 本研究に参加する時点で,健常高齢者は基本的に意欲的であるため,調査紙結果と記憶成績の関連性を見つけることは難しいが,来年度以降も調査を継続し,何らかの傾向性を明らかにする予定である。 実験の実施状況(遠方の研究室に出向いてくる,冬の降雪時)が特殊であるため,25年度以降は,研究場所や時期の一層の工夫と,研究実施方法の再検討が必要になった。また再認法の検討が残った。それ以外は,概ね順調に研究は進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度には,夏に第一期の実験,2013年2・3月に第二期として実験を行った。第一期の実験では,種類の異なる複数の属性情報の連合記憶の向上に影響を与える諸要因を検討するために,単語対(言語)記憶と場所・対象物(視覚)記憶による実験を,健常高齢者に参加してもらって実施したが,視覚短期記憶において場所(位置)記憶のエラーが対象物記憶に比して少なく,若年者の成績と同様のパタンであることが明らかになった。また,第二期では,これまで行ってきた単語対連合記憶実験を,新たに手続きを修正して実施し,試行数が記憶成績に強く影響することを明らかにした。同時に符号化方略を呈示することで,その利用と効果の方向性を検討した。また,高齢者の持つ記憶への信念や自己効力感など,また生活全般への意欲やウェルビーイング感情,身体的健康などを質問紙法により調査した。実験結果からは目的である符号化方略の効果を明確には見いだせず,今後更に実験方法を検討する必要があることがわかった。 本研究に参加する時点で,健常高齢者は基本的に意欲的であるため,調査紙結果と記憶成績の関連性を見つけることは難しいが,来年度以降も調査を継続し,何らかの傾向性を明らかにする予定である。 実験の実施状況が,参加者には遠方の研究室に出向いてもらう必要がある,北陸地区特有の冬の降雪時に参加を募ることができないなど,特殊要因を含んでいるため24年度は研究遂行に困難を伴った。25年度以降は,研究場所や時期の一層の工夫と,研究実施方法の再検討が必要になった。また先行成果が少ないため,実験計画の実施には手探りの状態が伴った。そのため,25年度以降にはテスト法の検討のほか,いくつかの計画の再調整が必要である。しかしそれ以外は,概ね順調に研究は進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は,24年度のデータ分析を詳細に行い,その結果を受けて,符号化方略の種類とその効果について,再度,単語対連合記憶実験および積み残した再認テスト法の比較を行う。その際,最適な実験手続をより慎重に検討する必要がある。また,実験参加者を広く募るため,研究実施時期に加え,研究実施場所や個別のみならず集団による実験方法などを工夫する予定である。また,連合記憶課題そのものも,視覚長期課題について検討を試みる。 本研究に参加する時点で,健常高齢者は基本的に意欲的であるため,調査紙結果と記憶成績の関連性を見つけることは難しいが,25年度以降も調査を継続し,何らかの傾向性を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験実施時期と場所,および実験方法を検討しなおして,多くの高齢者に参加してもらえるように工夫し,参加者数を増やす。また,データ整理や実験補助の協力者を募る方法も工夫する。24年度は高齢者研究の交流会を遠地で開催したが,25年度は研究者の勤務地周辺で開催する予定である。その他は,当初の研究計画どおり進める予定である。
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