2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530813
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 敬一 静岡大学, 教育学部, 教授 (90313923)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 複数テキスト / 学習 / 書かれた論争 / 批判的統合 / 複数文書モデル / 高次リテラシー |
Research Abstract |
本年度は,論争的な複数テキストから批判的統合を介して構築される記憶表象の性質について検討するために,次の3つの研究を行った。1.論争的な複数テキストから構築される記憶表象の性質を調べた国内外の研究を幅広くレビューし,現時点での到達点と課題を整理した。この結果についてはレビュー論文としてまとめ,本年度刊行の大学紀要において発表している。2.批判的統合を介して構築される記憶表象の性質を調べるために新しく開発した実験パラダイムを用いて,大学生を対象とした個別実験(実験1)を実施し,構築される記憶表象の性質について対照的な2つの仮説(選択融合仮説とアーギュメント仮説)を検証した。しかし,学習測度の問題から得られた実験データでは2つの仮説を差別化することができなかった。そこで実験2では,学習測度を一部改変して追試を実施した。その結果,(複数テキストから複数文書モデル[複数状況モデルと間テキスト・モデルが統合された記憶表象]が構築されるとする)複数文書モデル枠組みの仮定と一致するアーギュメント仮説を支持する結果が得られた。複数文書モデル枠組みが複数テキストからの学習においてもっとも有望な理論的枠組みとされていながら十分な検証が行われていないことに照らして,これは重要な成果と言える。2つの実験結果は論文としてまとめ国際誌に投稿中である。3.「1」の実験パラダイムで用いたテキスト材料が現実場面で用いられている複数テキストとかなり異なることから,できるだけ現実の複数テキストに近いテキスト材料を用いて,複数文書モデル枠組みの仮定をさらに検証する実験を大学生を対象に実施した。現在,その実験で得られたデータを分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の計画では,実験的手法を用いて,書かれた論争から批判的統合を介して構築される記憶表象の解明を主たる目的としていた。この目的に関して本年度は2つの実験を行い,さらに補足的な実験を実施したが,本研究のもっとも基本的な理論的枠組みである,複数文書モデル枠組みと批判的統合の枠組みに照らして,十分に解明できたとは言えない。本年度に記憶表象の性質を明らかにし,次年度は記憶表象が構築される過程を明らかにするという当初の研究計画通りに研究を進めていくのはまだ時期尚早であろう。さらに,記憶表象の解明に向けた実験もあわせて実施していく必要がある。その意味で,「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降における研究の推進方策は次の通りである。1.批判的統合を介して構築される記憶表象の性質を調べるために新しく開発した実験パラダイムを用いて,実験をさらに行い,今年度の研究で検討できなかった記憶表象の性質を明らかにする。加えて,今年度の研究知見に対して考えられる別の説明を反駁していくためのデータを収集する。2.記憶表象の解明が十分進んでいないことから,少なくとも次年度は,記憶表象構築過程を明らかにするための研究方法を,発話思考法や微視発生的アプローチという時間と手間のかかる方法から,より効率よく実施できる方法へと変更する。具体的には,「1」で述べた実験パラダイムを活用する,実験参加者が複数テキスト読解中にとったノートや読解課題として産出したものを分析する,複数テキスト読解課題をパソコン画面で呈示してログ記録により読解過程の詳細を分析する方法を用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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